WASABI (ページ1)

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「久しぶり、最近どう？」

『うーん、ぼちぼちやけど。またなんかあったん？』

日付も回った午前2時頃、明日の朝も仕事があることがわかっていながら電話をかける。
少し甲高くて、安心する声。少しキツく聞こえる関西弁も彼の声だとなんだか落ち着くような気がする。

真夜中に電話なんて非常識なんてことはわかっている
ただ、電話をかけずにはいられなかった。なんて言ったって、私の彼氏が最低なクズ野郎だから。話を聞いてもらわなければこの怒りは治まらない。

彼は何時に電話をかけても怒らず話を聞いてくれる、明日の朝だってきっと早いのに。こんなこと、もう辞めなきゃいけないと頭ではわかっているのに。彼なら許してくれるであろうと私のわがままな考えで彼を朝まで電話するという行為に引きずり込んでしまう。

「でさ、もう別れたいなって。」

『おん。ええやん。別れたら。』

「誠也くんはいっつも、別れなってしか言わない。慰めるとかないの？笑」

『なんで慰めなあかんねん。Aの話だけ聞いとったら別れたらえーんちゃう？って思ってまうわ。』

「そんなもんか、いつもありがとね。」

『ええで、べつに。』

「また連絡するね」

『おー、わかった。おやすみ』

彼との通話を切る。彼氏とのメッセージを開くと、[今日はごめん]と連絡が入ってることに気がつく。

「はぁ。もう少しだけ頑張ってみようかな」

彼に「まじで別れる。今回に限っては」と何回も何回も言っていたくせに結局許してしまう。
[わかった]とメッセージを打ち、携帯の画面を閉じる。

ふと時計を見ると、電話をかけてから2時間も経っていた。
明日も仕事だ、と気合いを入れてゆっくり目を閉じた。