馬鹿はお好き？【d!】 (ページ25)

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アイシテページ25

　
帰ろうと下駄箱へ向かう途中、通りかかった教室から誰かの啜り泣く声が聞こえた。

私は何かあったのだとその教室のドアを恐る恐る開け、中に入った。

中には、片手でカッターを持っていてもう片方の腕には赤い線が大量に引かれている男子生徒が居た。

明らかな自傷行為に私は咄嗟に彼に声をかけた。

すぐに彼の手からカッターを取り上げるのは良くない。

それがもっとストレスになってしまうかもだから。

『あの…大丈夫ですか？先程ここの教室から泣き声が聞こえて…』

男子生徒はゆっくりとこちらに顔を向けた。

深い藍色の髪に眼鏡を掛けていて、ヨレヨレの制服がやけに目立っていた。

顔色は悪いし、目の下には隈がある。

その男子生徒は私を視界に入れた途端目を見開いて、突然私の腕を掴んだ。

まるで縋るように。

ut「ぁ…あぁっ、おねがいやから…た、助けてっ、…」

目の前の彼は顔を真っ青にしながらそういった。

もしかして大事！？

『大丈夫ですか！？えぇっと…し、深呼吸してください！』

背中を擦りながら深呼吸するように言った。

そしたらなんとか落ち着いてくれたみたいで、椅子に大人しく座った。

『と、とりあえず何があったんですか…？』

「…ずっと愛してるよって言ってくれた大好きな子が、さっき仲間とき、キスしとって…なんで俺やないんやって、やっと見つけた愛なんに、なんでって…っ、」

また目に涙を浮かべる。

「僕な、昔から愛なんて貰ったことがないねん。

やから、ずっと色んな女で埋めてたけど、段々それじゃ満足できんくなって…

そしたら、その時大好きな子から貰った愛が僕を満たしてくれたんや。

…でも、その愛でさえ偽物やったんや。」

私は黙って彼の話を聞くだけしかできなかった。

愛を求めて求めて求め続けて…やっと見つけた愛を壊されて…

自分だったら耐えられないな…

すると、目の前の男子生徒は今度は私の手を包んだ。

「なぁっ、誰でもええんや、誰でもええから愛されたいねんっ、

…アイシテ、」
　
　
　