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【3話】獄都へ ページ3




大人しく…いや、俺たちに怯えているだけだろう。一言も発さずについてくる少女。
さっき木舌はそいつに、俺たちは「天使」だ、なんて言ってはいたが信じるわけもないだろうな。

連れてこられた先がこんな所では、な。
俺たちに対して、嘘つきと思っているのだろうか?
それもいらない心配だったようだ。


「ここにいる人はみーんな優しいから、安心してね。君のことを悪くする人は誰もいないよ」


相変わらず、首を縦に振るだけの返事だったが
木舌がずっと安心させるように話しかけている。
俺は特務室へと入った。


「肋角さん、連れて参りました」

「よくやった。さすがの仕事の早さだな。
中に入れろ」

「失礼します」
『し、失礼します…?』


肋角さんは少女の姿を見て、少し驚いた様子だった。
一瞬、目を見開くと煙管(キセル)を机に置き
少女をまじまじと見つめている。
さすがに少女を前に、タバコは吸えないのだろう。


「…驚いたな。
思っていたよりかなり若い」

「肋角さん、この子をどうするおつもりですか?」

「いや、悪いようにはしないさ。コイツに罪はない。選択肢は、天国に行くか…獄卒になってもらうか、だ」

「この少女を…獄卒に、ですか!?」


ようやく肋角さんが席にどっかりと座り直り、威厳のある顔で笑った。

「お前たちが思っているほど、コイツはか弱くない」
「…と、言いますと?」
「お前たちも聞いただろう?
あの数の大人たちから、他の子供を守っていたと」


確かに、子供たちは口を揃えて言っていた。
(人1)ちゃんが守ってくれた、と。


「聞かせてくれ。
お前は、あの施設の大人たちと戦っていた。
そうだな?」

『私、は…』

「…まぁ言いにくいだろうな。
いい、お前がどんな生活を送っていたかは映像で確認済みだ。
そこで、1つ頼みたいんだが」


そこで言葉を切ると、少女は伏せていた顔をやっと上げた。
肋角さんと少女の目が合う。


「お前に獄卒になってもらいたい。
身体能力、行動力。
お前には獄卒の素質がある。(人1)」

『私に…?』

「もちろんタダでとは言わない。
獄卒になると言ってくれるのなら、お前の辛い過去の記憶は消してもいい。
美味しいものを食べられるし、自由なことができる。

もう誰も、お前に危害は与えない」


前の生活とは違ってな。
そう締めくくった肋角さんの言葉に、じっと聞き入っていた少女は覚悟を決めたような、真剣な顔をしていた。


「…私、獄卒になります」

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くしゃみ(プロフ) - ねむねむさん» ありがとうございます!これからも更新していきますので、読んでいただけると幸いです (2017年10月24日 7時) (レス) id: 51cd69e18b (このIDを非表示/違反報告)
ねむねむ - お話見ました。面白いです (2017年10月24日 7時) (レス) id: 7ee805d977 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くしゃみ | 作成日時:2017年10月22日 23時

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