シャオロンside ２ ページ34
こんなに苦労してAを探した理由は、たった２つ。
Aに逢いたいから。Aに謝りたいから。ただ、それだけ。
Aに逢って、前世での俺等の愚行を一言謝りたかった。許してもらおうなんて微塵も考えてなくて、本当に、ただ謝りたかった。
その為に幾つもの国を渡り歩いて、何百、何千、何万もの人を調べて、何億もの資料を読み漁った。
そうやってしてようやく会えたのに、初めて面と向かってした会話は、俺が望んどったものとは正反対のもので。
『......痛いぞ、シャオロン』
シャ「こうでもせんと逃げるやろ」
こんな会話をしたくて、こんな形でAに触れたくて、あんなに苦労してたわけやないのに。
なのに、俺の意見も聞かずに意味不明な事ばかり話すAに怒りが沸々と沸いてきて、グルッペンが止めてくれんかったら、感情のままに怒鳴り散らしとったかもしれん。
シャ「.....A、お願いやから、ほんまに一生のお願いやから、俺等の所に戻ってきてくれ.....」
我ながら情けないと思う。好きな女の前で、男のくせにボロボロ泣いて必死に縋って......
それでもどうにかしてAに戻ってきてほしくて、一縷の望みを抱いてAを見つめる。
Aはこんな俺を見て、どんな顔をするんやろうか。
そんな一抹の不安も抱えながら。
シャ｢A....？どうしたん？そんな顔して.....｣
しかしAがその顔に浮かべたのは、俺が泣いとる事への幻滅でも軽蔑でも、俺に対する憤怒でも落胆でもなかった。
見る見る内に口角が上がり、眉尻をこれでもかと下げ、慈愛をたっぷり溶かし込んだ金の瞳で俺を見つめて。
その様を一言で表すならば、「歓喜」。
慈愛に満ち溢れたその顔は、まさに我が子の成長を慶ぶ母親のそれ。
緊迫したこの状況に全くそぐわないその顔に一瞬狂気を感じたが、愛情を煮詰めたその瞳の奥で揺れている悲嘆に気付き、酷く胸が締め付けられた。
シャ｢A....？どうしたん？そんな顔して.....｣
そう聞いても答えは返ってこなくて、しばらくの沈黙の後、何かを諦めたような、何かを悟ったような顔で１つ、Aは頷いた。
一体この短時間でどんな思考回路でどんな答えに行き着いたらそんな顔になるんやと疑問も少し残ったが、とりあえずAが戻ってきてくれる事に安堵し、嬉しさを奥歯で噛み締める。
が、その後発信器が付けられている事を知ったAの顔から感情が抜け落ちていくのを見て、再び胸が締め付けられた。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
