脱出 ページ18
嫌だ。
その目。何で、何でそんな目で......
私はやってないんだ。
私は、
私は......
『私は......！！！』
自分の大声で、ハッと目が覚める。
と同時に、酷い嫌悪感が私を襲ってきた。
何だ。憐れに弁解するこの姿は。
悪いのは全て自分だと、彼等は相応の反応をしたまでだと、死ぬ前に察したはずだろ？
全ては、私が悪いんだ。上に立つ者として、
だから殺されたんだ。
父上のように。
どれだけ頑張っても、どれだけ民の事を愛していても、結局は父上と同じだったんだ。
『......ここは何処だ？』
しばらく自己嫌悪に陥り、改めて己の無力さを思い知ったところで、上体を起こして辺りを見渡す。
私が寝ている天蓋付きベッドを始め、落ち着いた黒が占める広い部屋。
難しそうな厚い本が並んだ黒い本棚。
窓際に置かれた花瓶に挿さる、美しい紫蘭。
何処かで見たような気がするが、何度目を凝らし何度思考を巡らせても、一向に思い出せない。
まあ思い出せないのなら仕方ないと、半ば諦めてふと横を向いた時。
目を疑うような物が、視界を掠めた。
『......ｯ！』
ベッドの横、黒いテーブルの上に飾られた、１枚の写真。
その中で、大きな城を背に、彼等と私が笑っている。
それはもう、幸せそうに。
これは、私達がある大改革を実施した時の写真だ。
何故、これがここにある？
彼等は私が嫌いだから、てっきりもう捨てられたものだと思ってたのに。
.....ん？彼等....？
『.....っ！
そうだ。私はオスマンと兄さんに.....』
写真を見つけた直後、今までぼんやりとしていた脳内が一気に晴れた。
すると、湧き水のように昨夜の記憶が浮き出てきて、冷静に頭が回り始める。
昨夜のオスマンの話を聞いた限り、ここは城と考えるのが妥当だ。
そして、ここ。
ようやく思い出した。
ここは、黒がよく似合っていたグルッペンの部屋。前世と全く変わってない。
ならば、ここから逃げ出さなければ。
彼等の為に。
そう決めるが早いか、急いで体を動かして部屋の扉を開く。
城の造りが変わってないのだとしたら、ここは４階。最上階だ。
下に続く階段があるのは、廊下の中央.....食堂の横。
そこまで辿り着けたらこっちのものだ。
気配を消して、グルッペンの部屋から足を踏み出す。
そしてそのまま、一切音を立てずに廊下を全力疾走した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1320人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
