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前世 ページ3

前世の記憶を思い出したのは、母親に抱かれて村を散歩していた時だった。

突然、まだ十分に発達していないはずの小さな脳に、莫大な量の映像が流れ込んできたのだ。

彼等と過ごした幸せな日常から、戦争で戦った時、彼等のあの言葉から、死ぬ間際の時の映像まで。
それらは妙に現実味を帯びていて、前世の記憶だと判断するのに、そう時間は掛からなかった。


『今日も良い天気だな』

観音開きの窓を開けて、田舎特有の新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。

ここは、我々国の辺境にあるラインク村。人より獣の数が多い、何処にでもあるような田舎だ。
そんな小さな村で産まれた私は、前世は女王として、この国を治めていた。

だが、部下による反乱で死亡。情けない話だ。

まあ、前世は前世だ。死んでしまったのだから仕方ない。
彼等も、私が死んで清々した事だろう。

お「あらAちゃん!今日もべっぴんさんやねぇ」
『冗談はやめてくれ。
 おばさんは今日も畑仕事か?』
お「そんなんよ!もう腰が痛くて痛くて...........
  あ、そうや。休憩がてら、ちょっとお話でもせぇへん?」
『あ、ああ。そうだな』

川で釣りでもしようかと家を出ると、腰の曲がったお婆さんが、道沿いの畑に水やりをしていた。

この人は、私が産まれた時からこの村にいる。今年で90歳だそうだ。
見た目は年相応なのに、中身がまるで40かそこらの人だから、敬意を込めて「おばさん」と呼ばせてもらっている。

そんなおばさんに手招きされ、近くにある彼女の家の縁側に腰かけると、湯呑みを持ってきたおばさんが早速口を開いた。

お「今日は何の話をしようかね.........
  そうや!ライター様の武勇伝にでもしよか!」
『あ、ああ』
お「Aちゃんが産まれるず〜っと前に、A・ライターっていう女王様がおったんは話したやろ?
  そのライター様はな、こんな辺鄙(へんぴ)な所まで来て水路を造ったり、この土地について調べて、育てやすい作物の種を配ったりしてくださったそうなんや。
  あの御方は15歳で御両親を亡くされたのに、先代のどの王様も敵わんくらい、立派な女王やったそうやで。
  それやのに、部下に殺害された。
  Aちゃんが産まれる100年も前の事件やけど、今もあのお方の死は国民に悲しまれとるんよ」

おばさんは前世の私が大好きらしく、よくこうしてライターの武勇伝を聞かせてくれる。
ライターが死んでも好いてくれるのは嬉しいが、やはり少し恥ずかしいな。

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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません! (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:クレア | 作成日時:2019年10月26日 16時

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