レモンエレジー (ページ45)

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TN｢よ、ろしいんですか？｣

｢あってます｣

不安げにこちらを見てきたのでグーサインをびしっと立てて頷き返す

するとほっとしたように表情を和らげたと思ったらまたすぐに顔が厳しくなった。

作法に厳しい父の目の前で食事を取る事になる。それを思い出したのだろう

『テンさんは何か好きな食べ物はありますか？』

TN｢ぼ、僕ですか？僕はレモンが好きです｣

『そうしたら素麺にレモンを付けて食べるとしますか。まだ本格的な夏場ではないですがそこは少し多めに見てください』

『そしたら私買い出しに行ってくるけどAはどうする？』

｢あ、私は残ってる｣

『あらそう、じゃあ少し行ってくるわね』

『俺も行こう』

『あなたも？そう、じゃあ行ってくるけど他に何か欲しいものとかある？』

｢私は特に何も。テンさんは？｣

TN｢僕も大丈夫です｣

テンさんの紹介をした瞬間にダメだと切り捨てられ家から追い出されるかという覚悟もしてきた私からすると食事まで進むという拍子抜けするような展開だ。

がしゃんと扉を閉める音がして2人が出掛けていく。その瞬間テンさんから力が抜けへにゃへにゃとちゃぶ台に突っ伏す

TN｢Aちゃんもう一回だけ練習しておこう｣

｢またですか？もう大丈夫ですよ絶対｣

TN｢僕大丈夫じゃない自信しかないけど...言語の壁があるのは重々承知だけどそれでも賄いきれないぐらいキョドってたよ｣

｢でも父があそこまで和やかに喋っているのは久しぶりに見ました｣

TN｢和やか...｣

あれが和やかなのかという衝撃と疑問が伝わってくる表情に思わず吹き出す。

TN｢なっ、Aちゃんまで！今日はよく笑われるな...｣

｢テンさんはテンさんのままでいいんですよ。父が凄いタイミングで帰ってきた時の挨拶の仕方はホストが出てましたけど｣

TN｢嘘ほんとに？！気をつけてたつもりなんだけど癖って怖いな、｣

｢お母さんもあんな態度ですけどすぐにテンくん可愛いわねって言い始めるので｣

TN｢いやでもなぁ、、やっぱりもう一回だけやろうよ！｣

｢どこら辺ですか？｣

TN｢将来についてはどう考えているのかと、後はホストってどんなことをしていたのかの所｣

｢待ってください台本探しますね｣

TN｢じゃあAちゃんがお父さんとお母さん役で｣

｢えーっといきますよ？君は将来をどう考えているのか『ただいまー』｣

お母さんの間延びした声が私の声に被さるように家に響いた