レモンエレジー (ページ44)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:70,714 hit

44 ページ44

TN｢傷つかなかった訳ではありません。言われた言葉の数、酷さ相応に傷ついてきました｣

TN｢きっとこれからも何か言われることがあるかもしれません。それでも僕は、｣

『...何があったんだ？』

｢、お父さん！｣

『君は？』

TN｢Aさんとお付き合いをさせて頂いています、チッタポンリチャイヤポンクルです。｣

『君がテンさんか。とりあえずそこの2人はお互いの髪を引っ張るのをやめて座りなさい。お客様に見苦しい姿をお見せして恥ずかしくないのか』

.

.

『先程はお恥ずかしい所をお見せしてしまい大変申し訳なかったです。中々に難しいと思いますが気を楽になさってください』

TN｢いえいえそんな｣

少し大きめのちゃぶ台の四足で区切られた空間に2人ずつ、茶色い板を挟み向かい合う。

言葉では謝っているはずなのに表情は厳しいままの父の顔を直視出来ずに机に出来た小さな染みを見つめる。

予めテンさんには話してあったが、私の父は口数が少なく厳しい人だ

小さな頃から行儀や作法に煩く、反抗期はそれに必死に抗う私と譲らない父で何とも滑稽な争いを日々繰り返していた。

それに対して母は、楽観的で話すことと人の世話をしたりする俗に言うおせっかいな所がある人だった

そんな対照的な2人でも、大きな喧嘩をしている所は見たことがない。
食事中は母がひたすらに喋り続け、それを黙って父が聞き、たまに短く返事をするというのがお決まりだった。

決して話を聞いていない訳ではなく、単純に話をすることが苦手だと分かっていてもその無言の状態から発せられる圧力には中々に耐え難いものだ。母は気にならないらしいが。

さてこの状況をどうしたものかと視線を動かす余裕が少し出来たが、依然として父とテンさんの顔は厳しいままだ。父は普段からとして、テンさんは多分緊張からくる表情だろう。

『ひとまずお昼を先に食べませんか？是非一緒にと思い出来たての酒を持って帰って来たのですが』

TN｢い、いいのですかい？｣

『っ笑』

驚きのあまりよく分からない日本語が凄い勢いで飛び出してしまい、母が思わず吹き出す。
父も勢いに驚いたのか少し目を見開く。
当のテンさん本人は何が何だか分からないという顔でこちらを見る。

｢テンさん、そこは多分いいんですか？か、よろしいんですか？だと思います｣