不覚 ページ10
｢ん.......あ、学校っ！！.......ってここにはないのか。｣
勢いよく飛び起きて、ここが自分の部屋では無いことに気が付く。未だ回らぬ脳みそで、自分の状況を考えるが、まだ眠たいという欲望が思考を奪っていった。
むにぃと頬を伸ばしてみては、痛さを感じてため息をつく。これは夢ではなく、現実なのだと突きつけられているようで、視界が揺らいだ。
｢お風呂、入りたいなぁ。｣
昨日は色々なことがあったから、ご飯を食べることも、お風呂に入ることも忘れていた。食べないことなんて日常茶飯事だったが、丸一日食べないのはさすがにきつい。
コンコン。
そんな時に戸を叩く音がした。
返事を返すと、扉が開いた。そこに居たのは、昨日も呼びに来てくれた女の人だった。
｢ご飯出来たんだけど、食べれる？｣
｢あ、はい。でも.......｣
私は今日死ぬかもしれない。なら別に取らなくてもいいや。そんな気持ちが伝わったのか、女の人は
｢貴女の話、私たち昨日聞いたの。ごめんなさいね、勝手に。その返事もご飯の時に言うと言ってたわ。｣
そう言った。
｢そう、ですか。では行かせて頂きます。」
女の人は満足そうに笑った。
｢よぉ嬢ちゃん！じゃなくて、あー、Aちゃん、だよな？｣
｢！....はい。えっと.......｣
｢俺はサッチ。この船のコックをやってんだ。よろしくな！｣
｢サッチ、さん......ありがとう、ございます。｣
笑顔でお礼をした。女の人に｢こっちよ。｣と呼ばれたため、お辞儀をしてその場を去る。ここに来て沢山名前を呼ばれることが嬉しくて、笑いながら女の人のところへ向かった。
｢.......Aちゃん、可愛すぎねぇか？｣
｢いやぁ、あの笑顔は飯3杯いけますね。それより、手を動かしてくださいよ、手を。｣
｢やべぇな、これは可愛いわ。｣
｢もー。｣
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作者名：藤堂 | 作成日時：2020年3月6日 16時
