好奇心 ページ9
残された部屋の人達は、何も話すことなくその場からも動かなかった。
ただただ、先程居た少女の気持ちが分からなくて、悩んでいたのだ。
｢なあ。｣
誰かが声を発した。それは、末っ子のエースだった。
全員、視線はエースに向けて、続く言葉を待った。
｢俺、さ、殺したくねぇよ。あれがあいつの幸せだとは思わねぇ。｣
でもよ、と言葉は続いた。
｢もし、あいつが心の底から死にてぇと思うなら、俺たちはどんな顔をすればいいんだ.......？｣
海賊をやる以上は人の命を奪うことがある。死にたいの懇願する奴らもいた。けれどもそれとは全く状況の違う願いのため、どうすればいいのかエースには分からなかった。
｢俺もな、あの子は本当に死にたいと思ってるわけじゃねぇと思ってる。けどよ、大人を信じれないってのは事実だと思うんだ。｣
サッチは真剣な眼差しで、そう言った。
｢だからこそ、俺達が信じられるような人間になればいいと思う。｣
親父のようにな。
ニカッと笑ったその目は赤かった。
｢だね。あの子に何があったか知らないけど、でもやっぱり生きてて欲しいよ。｣
ハルタはぐすぐすと鼻をすすりながら言った。その言葉に賛同するように、ジョズやイゾウも頷いた。
ちょうどその時マルコが帰ってきた。少しだけ雰囲気が和らいでいて、何かがあったことはわかったが、本人はとても言いそうになかった。だがそんなことお構い無しにサッチは突き進む。
｢おいマルコ、何ニヤニヤしてんだ？手ぇ出したわけじゃ｣
そこでマルコに頭を殴られた。
｢いってええええ！｣
｢なわけねぇだろうよい。
ただ、名前で呼んだら嬉しがってたから.......｣
場面を思い出しているのか、顔をふせながらそう言った。サッチは痛さに悶えているが、いつの間にか親しくなり始めているマルコに、言いようのない気持ちを覚えた。
｢おまっ.......名前教えて貰ったのか！聞くの忘れてた！｣
｢確かにな。明日聞くかー。｣
｢そうだ。明日にはAの願いに対する返事を出すって言ったから、それを決めるよい｣
.............。
暫くの静寂があった後に、数名の叫びが響いた。
｢何勝手に話進めてんだ。昨日の今日で急に答えだしていいのか？｣
｢.......俺が思うに、あいつはただ認めて欲しいだけなんだ｣
マルコは目をふせた。
｢あいつは、死にたいわけじゃないはず。｣
だから死なせねぇよい。
その言葉に、全員が頷き、笑った。
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作者名：藤堂 | 作成日時：2020年3月6日 16時
