鉄樹、花を開くⅢ【相澤消太】 (ページ29)

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黒鉄side

中に入ると何人住めるんだとと思うぐらい大きな立派なコテージ。

そしてリビングであろうスペースにはこれまた高そうなソファがL字に並べてあって、片方には黒鉄明さんと奥様らしき方が座っている。

黒鉄明「よく来てくれた、かけてくれ」

「失礼します」

私は案内されるがままに腰掛けた。

慶「おま、俺のときと態度ちがうじゃねーか」

黒鉄慶は私の隣にぼすっ！という音を立てて生意気に座る。

「少なくともあんたには敬語を使わなくていい関係なんだと思ってる。年齢的にも、、、血筋的にも。」

明「…流石に気づいていたんだね」

「当然です。」

“黒鉄”という名字が珍しいかどうかはわからないけど少なくとも私が知っている人で“黒鉄”は居ない。それに全面戦争が終わってから聞いた。私を産んだ人物は公安ヒーローでその配偶者は“黒鉄”という政治家一族の人間だったと言うことを。

黒鉄さんはソファにくつろいでいた姿勢から起き上がり、背もたれを使わず真っ直ぐ私を見つめる。でもこの視線は嫌いじゃない。温かみのある黄色の優しい目つき。

明「はじめまして、黒鉄Aさん。私は黒鉄明、君の父親の弟で君の叔父にあたる。そして慶は君の従兄弟だ。」

慶「ども…」

明「今日来てもらったのは少し話したいことがあったから。君にとって父親と母親はどういう存在なのかはわからないけど、少し聞いて欲しい」

“父親”と“母親”

子供の頃、気にならなかったといえば嘘になる。

小学校の授業参観、母と手を繋ぎ帰っていった友達。日曜日に皆で楽しそうに買い物をする親子。

私の“父”と“母”はどんな人物だったのだろう、どんな顔で笑う人だったのだろう、どうして、、

私を置いていったのだろう。

だが皮肉にも、そんな思いが懐かしいと思うようになってから親の事を知った。

私を産んだ人物はヒーロー“グレース”。私を助けるために死んでいった。父とされる人物は政治家一家の次男で、私が生まれる直前事故にあい死亡。

…グレースには会った。私の中で。だが父とされる人物に関してはどんな人物だったのかわからないまま。

今更聞いて何になる。

そう思う気持ちもある、でも、、

「…分かりました」

聞いて損はしない

そう思った。