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黒鉄side
実はかなり緊張しながら会った黒鉄明。
理由は様々だが彼に挨拶することでSOSと人質の正体がわかることになる。
それは私が秘書の百合野さんのスーツのサイズを気にしていたときのこと。
黒鉄明“あまり見ないでやってくれ、この黒のスーツは私が渡したものなんだ。普段ならグレーのスーツなのだが、今朝私のコーヒーを淹れるときに零してしまってね”
普段は百合のように白じゃなくてもグレー。でも今日は葬式にでも行くような真っ黒。
黒い百合野さん→クロユリ
花言葉は復讐。
すべてを悟った。
本物の百合野さんはグレーな人。私の目の前にいる人は真っ黒だから別人、百合野さんじゃない。
人質が百合野さんだったんだ。黒鉄さんとは旧知の仲であり、息子の慶が慕う人物。
納得がいく。
私は挨拶を終えると偽百合野さんと黒鉄さんから離れた。
そして偽百合野さんが少し席を外したタイミングを見計らい、天喰くんにメールで現状を伝え警察に百合野さんの捜索と家族の保護に向かわせる。
後はそれらが完了するまでの時間稼ぎが必要だ。だが、時間を稼ぐなんて私にはどうすることもできない。
私はステージの観客を監視するふりをして、腕を組み、指でトントンとした。
ーー・ー ー・・・ ・・ ・ー・ーー
モールス信号である。
黒鉄明さんがチラチラとこちらを見ていることには気づいていた。ならばこの手法は伝わるだろうし、バレにくい。
モールス信号、、知ってるよね？！！
と焦りながらも黒鉄さんは偽百合野の死角でアロハな手をした。
…どうやら伝わったようだ。
私が送ったモールス信号は【ねばって】の4文字。挨拶を引き延ばせって意味。
そして黒鉄さんから帰ってきたアロハの手はハンドサインで【ありがとう】
黒鉄さんはどうやら話術も達者で本来なら3分で終わる挨拶をどんどん引き伸ばしてくれる。
おかげさまで百合野さん達は保護。偽百合野の尻尾まで掴めた。
偽百合野は私をこの場から遠ざけようとした。なんともわかりやすい。
私は話に乗ったふりをし1度は会場の外に出て、そのまま急いでとんぼ返り。
天喰くんには私と偽百合野の会話を無線から聞かせていたので、入口ゲートを託した。
そしたら後はトントン拍子ってわけ。
「ああ、長かった！！」
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作者名：やゆよ | 作成日時：2024年2月4日 22時
