鉄樹、花を開くⅢ【相澤消太】 (ページ16)

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黒鉄side

私が袖に着くと既に護衛対象は来ていた。隣には付き人が1人。

まだ挨拶まで30分あるぞ、、控室にでも待機していればいいのに

暇なのか？暇なのかなぁ？

という思いはぐっと心にしまい、挨拶に行った。

「はじめまして、アインです。本日、黒鉄さんの護衛をさせていただきます。」

明「はじめまして、アイン。噂は聞いているよ、今日はよろしく頼む」

黒鉄明、確か60代だったか。若々しい黒髪に、丸く温かみのある黄色の目。イケオジ俳優に見えなくもない。ガタイがいいからか、スタイリッシュに決めたスーツの中には鍛えられた筋肉がありそうだ

明「紹介しよう、私の秘書の百合野だ」

百合野「本日はよろしくお願いします」

百合野と名乗る男性は私に名刺を差し出した。

百合野さんは50代後半〜60代ほどか、、黒鉄さんよりも小柄。ベテランと言ってもいいと思う年代なのだが、少しスーツが大きすぎるように見える

百合野「あの…」

少し見すぎてしまったか。

黒鉄明「あまり見ないでやってくれ、この黒のスーツは私が渡したものなんだ。普段ならグレーのスーツなのだが、今朝私のコーヒーを淹れるときに零してしまってね。」

黒鉄さんは笑顔でそう言った。

“黒の”スーツの百合野さん、ね。

「すみません、ジロジロ見てしまって。こちらこそ、よろしくお願いします」

これで挨拶は終わりと思ったが、突然黒鉄さんがよくわからない質問をしてきた

黒鉄明「…君は客として誰かとこういう場に遊びに来たことはあるのか？」

はい？？

質問の意図が分からず突然なんだと一瞬間抜けな顔をしてしまった

「…学生時代、友人と来たことがあります。」

黒鉄明「楽しかったかい？」

「！！楽しかったですよ、すごく」

あれは高1の夏休み

バカ食いしていた白雲と山田と私は見事に腹を壊した、それを消太が冷たい目で見てたっけな、笑

懐かしい、いい思い出だ

黒鉄明「そうか、それは良かったよ」

「はい。…では私は持ち場に戻り警戒を続けます。」

黒鉄明「よろしく頼むよ」

私は黒鉄さん達に背を向け舞台袖に戻った。

この人の視線は妙にあたたかく、むず痒い。でもそれは、

「そういうことだよね…」