表の俺と裏の君。【ホークス】 (ページ5)

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5　過去編ページ5

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俺と彼女が出会ったのは2年前、温かな風が吹く春の日。

事務所で一人、窓を開けて作業していると、ブワッと風が吹きこんだ。1枚のプリントが風に乗り机から飛んでいく。

捕まえようと手を伸ばした瞬間、それは空中で止まった。
　
　
『会長のご指示に従い、本日より貴方のサポートに就きます。』

彼女は風に乗って俺の前に現れた。

霞流A、当時17歳。薄水色の長い髪はきちんと手入れされていて若々しいというより綺麗という表現が似合う、だが目には一切の感情がなかった。

俺は直感した。
　

“あぁ、彼女はこの国に壊されてしまったのだ”

と。

彼女は自分の事に関する資料を手渡すと、任務があると言って窓から出ていった。どんな個性かは分からないが、風に乗って入ってきたのだから問題ないだろう

俺は何枚にもわたるその資料を手に取った。

「霞流A、17歳…」

まだまだ子供じゃないか

だが経歴はただの子どもではない。

4歳の頃公安に保護され、“英才教育”を受ける。彼女は順調に成長し12歳の頃には

“ヴィランミスリー”

となった。

“正義”であるべき組織が“ヴィラン”を育てる。

ゲスなことだ。

「個性霧化。霧、水蒸気。水蒸気になって部屋に入ってきたのか、？」

資料には今まで関わってきた主要な事件、個性の使い方、様々な情報が書かれていた。

“取扱説明書”

俺が資料に目を通した感想だ。今まで何をしてきて何ができるのかまで書かれている割に、好みや個人の感情にまつわることの記載は一切ない。

自分を“モノ”として使ってください。そう言っているように感じる

「とんでもない子が公安に居たもんだな…」

この時には既に、同情心を抱いていたのかもしれない。俺が光の射す方へ進んだと言うならば、彼女は闇の中に進んだ。

全てが真反対。

一つ共通点があるとするならば俺達は、、

日本国という大きな檻に閉じ込められたままなのだ。