表の俺と裏の君。【ホークス】 (ページ11)

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今日はAちゃんが休み。ここしばらくはずっの一緒だったから小瓶を抱えずに飛ぶのは久しぶりだ。

少し物足りなさを感じながら初めて彼女を抱えて飛んだときのことを思い出す。

「空はどう？、、ってAちゃんなら見慣れてるか」

『いえ、とても新鮮です』

「そうなの？」

『はい。私の場合、空を飛ぶと言うより風に乗るという表現の方が正しいです。霧といえば聞こえはいいですが実質は質量の軽いただの水蒸気、身動きは取れますが、そよ風程度で飛んでいってしまいます。自力での飛行も、安定した飛行も不可能です』

「なるほどね」

彼女の個性もかなり扱いが難しそうだと考えていると、瓶の中からさっきよりも更に小さな声が聞こえた

『すごく綺麗…』

俺はその言葉を聞き逃さなかった。

“安定した飛行は不可能”という彼女の言葉から推察するに、上空から街中を見下ろすのも、空をゆっくり眺めるのも、彼女には初めての経験なのだろう

「これから何度でも見せてあげるよ、広くて狭い、この世界を」

その後敢えて、景色がきれいな方向へ飛んだことをよく覚えている。

彼女と初めて会ったときは“感情を無くした”のだと思っていたが、きっとそれは間違いだ。

必死に隠しているだけで、何かを食べて美味しいと思う心も、何かを美しいと思う心もある。

“ただの17歳の女の子”

問題は“隠さなければならない理由”

つまり、

“公安に居る理由”だ。

そこに“会長との契約”も関与していることは間違いない

俺のようにヒーローに憧れた訳では無い彼女は一体、なんのために“ミスリー”なのだろうか

「まだまだ知らないことばかりだな」