こんな結末認めない。【第三夜】 (ページ18)

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痺れと憎悪【茨木童子】ページ18

一瞬の事だ。
激しい痛みが首元を襲ったのだ。
其処で、茨の意識が一度落ちた。

だが、其れも瞬きの間。
激しい憎悪が、茨木の目を覚まさせたのである。

「誰だァ！！！！」

其処で気がつく。自身の持っていた原本が消えていることに。
男らしく逞しい茨の腕が、持っていたはずの本は消えていた。

茨の脳裏に、男の姿が浮かび上がる。

「あの男……。見覚えがあるぞ……そうか、彼奴か……彼奴かぁ……」

地獄の底から湧き上がるように、茨の喉から声が絞り出される。
ギリィッと歯軋りをするように歯を噛み合わせたあと、茨の姿が変わる。
その額に赤黒いツノが現れ、爪が鋭く伸びた。

──其れは正しく平安の世を乱した鬼。

鬼は何処からかもう一振りの大太刀を呼び出す。

「赦さぬ。禍々しき人の子よ。彼奴に邪魔はさせぬ。酒呑と共に酒を飲み交わし、笑うのは……私だけで充分だ」

大太刀が二振り、答えるように禍々しい炎をあげる。
憎悪の炎に駆られる鬼を、目の前にて対峙した青年が止めにかかる。

「行かせられるわけないだろですよ」
「偽物の刀で、私を止められるとでも思うていたかえ？？」

茨が大太刀を大きく振りかぶる。
そして、そのまま思い切り投げつけた。

「うっ」

諸に受けては死を免れない。咄嗟に回避行動をとるノアであったが、目を開けた時には刀も鬼の姿も消えていた。

「我が大太刀は、消すも呼び出すも自在での」

鬼のもうすっかり削れてカケラとなってしまった理性に、友の姿が浮かぶ。

「酒呑……」

ただ一人のために、茨は鬼となり男を追いかけた。