こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ8)

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決断【ハートの女王】ページ8

『ワタシも今気づきました。女王様は図書館前で

突っ立っているようですのでそこで待ってて

はいかがでしょう。では、後程ゆっくりと』

ハートの女王はスマートフォンを仕舞うと、目の前にいる人物に目を向けた。
そこには深緑の優しそうな垂れ目を少し細めて、笑う幼い少女がいた。

「こんにちは、おねーさん」
「あぁ、こんにちは。 ……可愛いマッチ売り」

少し口角を上げてワザとらしく笑う彼女を見て、ハートの女王は、ドロドロと醜い何かが胸の中を満たしていくのを感じた。

可愛い可愛いマッチ売り。

お前がわざわざ自分から来るのは非常に珍しい。
わたしがお前の首を欲しがった時から、怯えて来てくれなくなったというのに。

きっと、わたしを此処から遠ざける為だろう？

誰かに言われたから、仕方なく。

そうでなければこんな首を欲しがる様な、恐ろしい人物の元の来る筈が無い。

ドロドロと醜い何かは気がつけばハートの女王の胸の中をじわじわと蝕み、それと同時に鈍い痛みを与えた。

胸が痛い。

まるで鋭利な刃物に胸を抉られている様だ。

昔からだ。
昔からわたしは__________。

……いや、今はどうでも良い事だ。

ハートの女王は、考えることを辞めた。
今は目の前の事だけを考えるべきだ。

マッチ売りがわざわざハートの女王の元へ来たのは、確実に此処から遠ざける為だろう。

さて、ではこれからどうしようか。

一つは、彼女の思惑通りに追いかけてやる事。
きっとそうする事で、マッチ売りは追いかけられている間は恐ろしいかもしれないが、己の仕事は達成出来る。
もう一つは、此処に残って梃子でも動かない事。
確か今回の原本の『赤ずきん』はどうやらチェシャ猫の相棒らしい。チェシャがわざわざ「動くな」と返信して来たのは彼女を思っての事だろう。

……。

……ぶっちゃけ前者の方を実行して、ワザと追いかけたらマッチ売りの中でわたしの好感度が上がるのでは？

好感度上げたいのだが？駄目か？

……まぁ、今回はチェシャの言う事を聞いといてやるか。
このツケはいつか必ず、近いうちにチェシャに払わせよう。

「はぁ～、すまんな、マッチ売り。わたしは此処を動く事が出来ないんだ」

本日何度目かの溜息を吐き、ハートの女王は大鎌を構えると、目の前の少女に向かってにっこりと微笑んだ。

「Queen of Hearts……その者の首を刎ねよ！」

辺りに力強い女の声が響く。
それと同時に大量のトランプ兵士がマッチ売りの少女を取り囲んだ。