こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ42)

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託して【帝】ページ42

今日は、早く起きてしまった。

会議中こんなことを考えていただなんて口が裂けても言えないだろう。でも、お陰で脳がいつもよりスッキリとしていて、物事は考えやすかった。

会議が終わった後。帝は十も歳の離れた彼女＿＿月詠詩のもとへと足を運んだ。

「やぁ、お嬢ちゃん？とうとう俺達の原本が解放されたねぇ…。そこで、だ。君にだから渡したいものがある。」

にこやかに(人によっては胡散臭くも見える)笑みを浮かべて詩を見下ろす。渡したいもの。それは＿＿

「これを、君に託そう。」

帝が渡したもの。それは、能力発動時に必ず使う愛用の万年筆だった。この世にリィンとして生を受け、能力を授かって間もない頃、能力の確認の為に初めて出した物、それが万年筆だ。となれば、原本と共にそれを渡せば物語は維持できるはず。そう思い、詩に託すことにしたのだ。

「理由は今言った通りだ。詩には責任を負わせてすまないと思っている。そして、これを詩に託したということは、今日俺は能力を使わない、ってことでもある。……分かるね？」

恐らく帝に攻撃やタチアオイ出版の人間が集中、もしくは強者誰か一人が帝に攻撃をしかけ、能力を発動させるように仕向けるだろうと予測したのだ。

「向こう……タチアオイ出版社は俺に能力を使わせたがる、つまり寄ってくるだろう。その隙に詩は万年筆を持っていることを悟られずに切り抜けてくれ……いいね？」

彼女がこくりと頷いたのを見るとふっと微笑んで、綺麗な黒髪をそっと撫でた。

同志二人から言われた言葉を思い出す。

「俺は、“俺らしく”戦わせていただきますよ。」

男は口許を歪ませた。