こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ21)

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とある少女の『ハッピーエンド』【ロート】ページ21

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　────幻想図書館から出て、ふぅと息を吐く。
　あの2人に見据えられたそこは、あまり上手く息ができなかった。
　その分を、というかのように大きく息を吸っては、吐く。

　･･････誰も傷付かないエンド、だったのだろうか、あれは。
　確かにおばあ様は生きていて、狼も────死ななくて。

　さぁ皆様これこそがハッピーエンドだ！そう高々と笑えるような話だった？

　「･･････誰も、死んでないもの。誰も、怪我してないもの。だって、みんな、息してるもん･･･」

　ロートはその場に踞った。
　先程まで自分を抱えてくれていた相棒は、先に戻らせていてもういない。
　息が詰まりそうだ。お前は正しくなんてないと指を指されて嘲笑われているような。

　────そっと眼帯に触れた。同じ手で、傷にも触れる。
　触る度に膨れ上がる怒りと恨みは、もうなかった。

　込み上げて来たのは、虚無感と、疲れ。

　「･･････どうすれば良かったと思う？･･･私にお話を考える力なんて、ないもの」

　「────それを俺に聞くかよ･･････」

　じゃり、と砂を踏む音が聞こえた。
　･･･振り返らなくたって分かる。それが誰なのかは。

　私を食べた──じゃなく、私を"食べようとした"狼。

　見上げれば、いつも私を見る目とは違う、怠そうな目で私を見ている。
　初めて安心して彼を見据えた気がした。

　「･･････俺は、食われたお前の方が好きだった」

　「･･･なぜ？」

　「目ｪ怖くても、まっすぐだったから」

　彼は私の目線までしゃがむ。
　私の復讐を恐れて眠れていないせいでできた、と聞いた隈は、もう消えるのだろうか。

　･･････なんの気紛れか、彼は私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。

　「･･･まｧ、何でもいいよ」

　「･･････」

　「･･････ま、どうしてもわかんねｪときは、誰でも、･･･俺でも、呼びｬ良いだろ」

　彼は数歩歩いて、にやと笑う。
　そして大きく天に向かって声を出す。

　「ねえおばあちゃん。どうしてそんなに大きな耳をしているの？」

　「―――は？」

　「･･････どうしてか、知ってんだろｫ？」

　す、と手を差し出して、私を立ち上がらせる。
　込み上げていた不安定な感情は、消えていた。

　「―――お前の声を、よく聞く為さ」