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醜く、美しい【ロア】 ページ17

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 「―――店長」



 我ながらバカらしい。
 気だるそうに頭を掻きながら、俺はそう感じた。
 俺の声に気付いた店長が、ゆっくりと振り返る。

 「お前か」とでも言いたげな・・・驚いたような顔をする。
 ―――あぁ、俺だって動くさ。原本が『赤ずきん』とありゃァ。



 「・・・・・・俺がアンタに化けて本を届ける。だからアンタは邪魔なのを倒してから来てくれ」

 「あぁ、・・・そうしてくれると、助かる!」



 店長は俺にひょいと鞄を投げて渡す。
 ・・・・・・次の瞬間、俺は結界から抜け出していた。
 ・・・んっとに、変な能力だな。俺は溜め息を吐いて―――ゆっくり後ろを振り返った。



 「・・・俺も見たよ、シンデレラ」



 今鏡に捕らわれているであろうシンデレラに、ぽつりと呟く。
 ・・・鏡は、そう。真実しか映さない。
 あの魔女より白雪姫のほうが美しいと示したように。
 運命とは、定めとは、変わりようのないもので。

 それを欲したところで、何も埋まりはしないのだ。
 霧からロートを抱えて出てきた猫井を前に、笑いながら俺はそう考える。

 ちら、と少し怯えているロートに視線を向ける。猫井の力が強まった気がした。
 ・・・むかつくゥ・・・・・・チクショウ。



 「・・・・・・おらよ」

 「・・・・・・!?」



 俺は猫井に抱えられたロートに、原本を持たせる。
 ロートは驚いたかのように目を見開いた。

 俺はくつりと笑う。



 「・・・・・・後ろからぶどう酒とケーキを持った人魚姫、幻想図書館には花を持った女王・・・
 材料は完璧だろォ、なァ?」

 「・・・・・・なぜ」

 「べつにィ? ・・・俺はただ」



 改変して、ハッピーエンドになって、お前が望む世界になって、
 ――――――お前のその虚無の何が埋まんのか、知りたいだけだ。



 「・・・・・・さァ、走れ。俺も寝返っただなんてのァ居心地悪ィ。10秒経ったら追いかけらァ・・・・・・」

 「はぁ!?」

 「じゅーゥ、きゅーゥ、・・・・・・」



 彼女はひょいと走り出した。

終戦【クロワ】→←鏡【シンデレラ】



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あぷり(元はる櫻)(プロフ) - 続編で更新します (2017年12月16日 17時) (レス) id: 1e40ca4b4e (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 終わりました (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 更新します (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 総悟13@サブ垢さん» 遅くなってすみません、終わりました。 (2017年12月16日 13時) (レス) id: 0d08c1bb88 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/novel/e071ba2eb19/ 続編です。皆様の予約が終わり次第関連付けしますが、もし足りなくなった場合にはこちらに。 (2017年12月15日 19時) (レス) id: d43f25135a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梨紗 x他15人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年12月3日 18時

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