こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ13)

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あめふり【マッチ】ページ13

「――――!!」

　咄嗟に袖に隠していたマッチ棒を大きくし、体を軸にしてぐるっと周りのトランプ兵達を一掃。……素直にここから去ってほしいんですけど、やっぱりダメですよね。

「……もう誘われても遊びませんよ?」

「それはお菓子があってもか？」

　ぐ。

「――あっても、です!!」

　声とともにトランプ兵を一枚消しました。けれど切りがありません。火が出たのなら、一瞬で多くを燃やせたかもしれないのに。

　――やっぱり、馬鹿なわたしには、何も出来ないのかもしれないな。
　昔からそうでした。毎日マッチを売るために街を歩いて、でも売れないから帰れなくて。結局何も出来ず、雪の中に突っ立っていることしか出来ませんでした。

　リィンとして再び生まれた今、わたしは、何のためにここにいるの？
　わたしは幸せな結末だった。
　だって死でしか救えないこともあるもの。
　今回の赤ずきんさんがそれに当てはまったのかはわたしが決める事じゃない……。
　わたしが、悠久古書店さんにいるのは――。

　また一本マッチが折れました。
　マッチ棒はまだあります。けれどさっきからずっと火はついてくれません。もしかしたら、沢山あっても全部火はつかないかもしれません。
　でも、諦めるわけにはいかないのです。

　ぼっ、という音と共に辺りが照らされ、ハートの女王さんや幻想図書館さんがさっきよりも明るくはっきりと見えます。
　火が、マッチ棒の先に灯っていました。

　――それなのに。

「……ほう」

　ハートの女王さんは眉を上げ、赤い瞳を空へと向けました。

「あ、め……？」

　ぽつぽつと降り始めた雨が、わたしの頬を、体を、そして残りのマッチ棒すべてを濡らしていきます。勢いのあった火は一瞬で消え、マッチ棒はただの木の棒に成り果てました。

「さぁ、マッチ売り。もう終わりか？」

　彼女が問います。
　あぁ、首が切れてしまうというのは、一体どんな感じなのでしょうか。

　――痛いに決まってます。確信。まだわたしのおしごとは終わってないのです。ここで投げ出す訳にはいかない。頑張らなきゃ。頑張らなきゃほめてもらうことなんて、できないのに。
　なのに雨は止むことを知らず、わたしを冷たく包み込んでいきます。止んだって、もう何もないのですが。

　――ねぇ、おばあちゃん。わたしは、どうしたらいいの。

「――マッチちゃん!!」

　不意に名前を呼ばれ、思わず声のするほうを向きました。

「……いのこ、さん……？」