四季紡ぎ。 (ページ11)

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決意と願い【炎斑天理】ページ11

「ぴんぽんぱんぽーん！夏班班長、早川綾音からのお知らせでーす。これより、『初雪奪還戦』を行います。手の空いている四季紡ぎは今すぐ出動するよーに。これは私たちの初陣です。間違っても国民の皆様に死に体は晒さないでね。前線に出る者、後方支援をする者は転移所へ。それ以外は本部へ集合せよー！以上で放送を終わります。ご武運をー……」

「遂に始まっちゃうのかぁ。」

自らが所属する夏班の班長の声を聞き、すぐに転移所へ向かう道中、ポツリと独り言をつぶやく。

着いた転移所では前線に出る者と後方支援をする者が粗方集まっており、
それぞれ不安そうだったり、精神統一をしていたり、緊張を解そうとしていた。

私だってそうだけど…と天理はここにいる四季紡ぎである皆を見て考える。

「ここにいる人たちって皆元々は普通の人で、四季を感じて生きて、急に奪われているのよね…。
しかも能力を与えられて、1期生の方達の後を継いで敵と戦うってなって。…緊張しないわけないか。」

天理は元々保育士になりたかったのだ。

それは当たり前の生活の中で考えていた夢で、
そのときはまさか四季がなくなるとも、能力を持った仲間と共に戦うなんて事も、想像しなかっただろう。

中学生のときに校門のすぐ横にあった桜がなくなった。
暑くなりだした頃によく鳴いていた時鳥の声が聞こえなくなった。
毎年家族と団子を食べながら見た月も見えなくなった。
近所の友だちと風邪を引くほど遊んでいた雪もなくなった。

当たり前が当たり前でなくなり、それにも慣れていってしまうとは。
人とはある意味では強い生き物なのだろう。

だけど

このまま慣れて、忘れてしまってもいいのだろうか。
四季を一度も感じず、育った子が増えていってしまうのか。

その考えは次第に四季の移り変わりを見せてあげたい、四季を取り戻したいという願いに変わった。

そうして天理は70倍という聞いたこともないような倍率の中、ようやく願いが叶えるチャンスをが掴んだ。

春には桜を
夏には時鳥を
秋には月を
冬には雪を
そして…未来には希望を

それらが全てここにいる者たちの手に託されている。

「…頑張ろう。いや、頑張らなくちゃいけないんだよね。」

初陣に向けて新たに天理は気を引き締め、決意を固めた。