質ノ巻「目と目が合う」 ページ8
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(……アイザワめ、ワシに見向きもせぬな……)
朝のホームルームとやらで、アイザワが生徒相手に本日の日程らしきことを述べている。ワシには到底判らぬことばかりだ。
にしても、最近の学び舎は随分と近代化したものだの。この目付きの悪い小僧も、こんなにも最先端な設備で学習が出来るのだから、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかのー。
後ろの席に座る緑毛の少年は、先程から何かぶつぶつと念仏を唱えておる。正直、不気味だにゃー。世の中には個性豊かなニンゲンがいるもんだわい。
昨日、ニンゲンに久々に化けた影響からか、言葉遣いが少しばかり変化した。
以前は「〜じゃ」と語尾に付けることが大方、古風な印象を持つような言葉遣いだったのだが、今現在はというと、少々近代的な言葉遣いに成った。
あと、一人称の「ワシ」というのも、なんだか言いづらいと感じる。これも、ニンゲンに変化(へんげ)した際の作用なのだろうか。
唯一、ワシの姿が見えるアイザワが構ってくれぬので、暇を持て余しておると、髪の半分が白、半分が赤の無表情の少年と目が合った。
若しや、見えるのか？
ちょっとした探究心で、右側に三歩ほど動いてみると、少年の目線もそれに伴い、右側に寄った。更にもう一度、今度は左側に三歩歩き、元いた位置へと戻ってみると、やはり少年の目線もそれに伴って動いた。
あー、これは確実に見えておるにゃー。
アイザワに「自分で対処できる」と堂々と言い放っておいて、いざとなれば何も浮かばぬ。さて、どうしたものか。
取り敢えず、後で口止めにでもいくかのー。それが一番いい気がするわい。
半分少年と睨めっこをしている内に、ホームルームは終わったそうで、ワシは早速、半分少年の元へ向かった。
「お前さん、ワシが見えるのか」
「……ああ」
「ちょーっといいかのー」
「？」
ワシは少年を教室の外へ連れ出した。
「先ず言っておきたいのは、ワシのことは他言無用で頼む。何故ならワシは神聖なモノだからな。ニンゲンには普段見えぬ存在、故にニンゲンにワシの存在を知られるということは即ちワシの運命が脅かされるのだ……お判りかな、半分少年よ」
「俺は轟焦凍だ。あんたの言いたいことは何となく判ったと思う」
「そうかそうか、物分りが良くていい子だのー、トドロキとやら」
「焦凍でいい。あんた、名前は？」
「うむ。ワシはワラコ、座敷童子だ」
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作者名：烏丸 | 作者ホームページ：( ˇωˇ )
作成日時：2018年3月14日 0時
