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あの日以降、宗介のことを思い出すと泣いてしまいそうになるため、なるべく考えないように過ごしていたら、あっという間に地方大会前日になってしまった。
宿泊先は大きなホテルで、去年の合宿との差に真琴達は驚いていた。
みんなでホテルの中に入ると、後ろから江の名前を呼ぶ声が聞こえて全員で振り向く。
ちょうどバスから降りてきた鮫柄の水泳部員達がいて、私は視線を下に逸らした。
江「お兄ちゃん達!」
凛「何だよ、お前らも同じホテルか」
渚「うん!よろしくね、愛ちゃん!」
似「だから愛ちゃんはやめてください!」
そんなやり取りが行われる中、江が思い出したように宗介に話しかける。
江「そういえば宗介くん、この前うちの近くの駅にいたでしょ?何してたの?」
それを聞いてピクリと自分の指が震え、ちらりと宗介の方を見る。
宗介も返答に困ったような声を出した。
しかし直ぐに二人の間に割り込んだ御子柴さんの弟くんが自己紹介をし始めた。
凛「A」
名前を呼ばれて顔を上げれば、凛がこちらを見ていた。
凛「大丈夫か?」
私が今どんな顔をしていたのか分からないが、どうやら心配されるような顔をしていたみたいだ。
少しだけ鼻の奥がツンとしたが、それを誤魔化すように笑う。
『何が?それよりあれいいの?』
あれと指を指した方では、御子柴さんの弟くんが江の手を握っているところだった。
それを見た凛は直ぐにそちらに向かっていった。
弟くんを引き摺るように連れていく凛に続くように、江に「じゃあな」と声をかけて宗介も歩いていく。
みんながそちらを見る中、私はバレないようにそっと目元を拭った。
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作者名:アコ | 作成日時:2023年9月10日 4時