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どうする。
ずっと何か違和感を感じていたのに、気づけなかった私に何ができるのだろうか。
肩がどんな状態なのか、それを知って私にできることは…
『カズ兄…宗介を止めてよ』
きっと私が何を言っても、宗介は聞いてくれない。
また謝って離れていくんだ。
数「宗介が決めたことだ、口出しはしたくねえ。それに分かってんだろ?Aが止められないなら、俺に止められるわけねえよ」
苦笑しながら優しく頭をなでるカズ兄に、私はそれ以上何も言えなかった。
数「でも知っちまったんなら、ちょっとくらい話した方がいいだろ」
カズ兄のその言葉に続いて、後ろでドアが開く音がして反射で振り向いた。
『…なんで』
数「さて、仕事に戻るかな」
そう言いながら立ち上がったカズ兄は、私の横を通り過ぎて「家まで送ってやれよ」と言い残して出ていった。
ご飯を作ってくれたり、時間を取ってくれたお礼をしないといけないのに、私はカズ兄に何も言えずに入口に立つ宗介を見ていることしかできなかった。
___…
「帰るぞ」と宗介に言われて、ついて行くように外に出る。何か考えているのか、宗介はそれ以降何も喋らずに私の数歩前を歩いている。
私自身も急に宗介に会うとは思っていなかったため、言葉に迷っていた。
だけど、カズ兄がちょっとくらい話した方がいいと言っていたのを思い出す。
カズ兄も口出ししたくないと言っていたが、きっとこのまま何もしないのは嫌なのだ。
『…宗介』
いつも通りに呼んだつもりだったのに、私の声は弱々しくちょっと掠れていた。
それでもちゃんと聞き取ったようで、前を歩いていた宗介は立ち止まり、そして少しだけ間を置いてから振り返った。
振り返った宗介の瞳が微かに揺れていて、その時にあぁ、宗介は私の次の言葉を恐れていると感じた。
だけど、このまま無視なんてできるはずがなかった。
『……肩、痛めてるんでしょ』
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作者名:アコ | 作成日時:2023年9月10日 4時