【Free!】待ち人２ (ページ42)

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ギュッと手を掴まれて、再び視線を下におろす。

「ねぇねもきんぎょほしーよね？」

『いらない』

無意識に、つい本音を言ってしまった。
私の答えに、妹はムッと顔をしかめると「なんでー！？いこーよー！」とグイグイと手を引っ張ってきた。

いつもなら上手く対応できるのに、今日の私には無理だった。

『いらないってば！』

バッと腕を振り払えば、その勢いで妹が尻もちをついた。

驚いたお母さんが慌ててしゃがみ込んだ。

「A！どうしちゃったの！？」

泣き出した妹を抱きしめながら、お母さんが私を見る。
その表情には驚きと怒りが混じりあっていた。

『…ごめん』

それ以外に何も言えなくて、私は逃げるように1人で駅に向かった。

_____…

家の最寄り駅から家に帰る途中で、ケータイを取り出して電話帳を開いた。

少し躊躇いながらも、思い切って名前を選択して耳にあてる。
呼び出し音を聞きながら、到着した家の鍵を開けて、そのまま真っ直ぐ自室に向かった。

何度も呼び出し音が鳴ったが、相手が電話に出ることはなかった。

『…たまには出てよっ！』

ケータイをベッドに放り投げ、両手で顔を覆った。

我慢していた涙が、家に着いた瞬間にどんどん溢れてきた。

今まで、ずっと待っていた。

凛がオーストラリアに行った日。私は凛が帰ってきて、話してくれるのを待つと心に決めたんだ。

だけど、全部無駄だった。

凛はそんな話覚えてすらいなかった。

涙を拭って、ベッドに視線を移す。
少し暗くなった画面には"山崎宗介"と表示されており、直ぐに画面が暗くなった。

それを見たらまた涙が零れて、私はベッドに顔を伏せた。

私はずっと2人のことを待っていたのに。
2人にとって私の存在は他の人たちと一緒だった。

待ってる意味なんて、何も無かったんだ。

凛の話は忘れるようなどうでもいい話だったのだろう。

宗介だって、東京に行って別の友達を作って、沢山泳いで、私の電話にも出ないほど楽しくやっているんだろう。

そしてきっと、あの人も…私の事なんて忘れてしまっている。

『…ばか』

せっかくの浴衣にシワがつくと分かってはいながらも、私はただただ涙を流すことしか出来なかった。