−８３− ページ40
少しだけ2人と話してから別れ、私は再び辺りを見渡した。
しかし、やっぱり目的の人物を見つけることは出来なかった。
そもそも来ていないのかもしれない。そう考えた私は、仕方なくお母さん達の元に戻ることにした。
人が沢山いる場所での合流は難しい。
そう思って、屋台から少し離れたところに移動して、申し訳ないがこっちに来てもらおうと思った。
確か向こう側なら…と視線を上げると、また赤が見えてハッとする。
ちらりと見えただけだが、身長的にも近い気がした。
慌ててそちらに足を動かし、人混みでぶつかる人に謝りながら進んで行った。
やっとのことで人混みから抜け出せば、数メートル先に目的の赤とその後輩が歩いているのが見えた。
『…っ、凛！』
私の声が聞こえたようで、足を止めて2人が振り向いた。
咄嗟に呼び止めてしまった…と自分の行動力に驚きながらも、私は距離を縮める。
凛「お前…なんで1人でいんだ」
少しだけ驚いた表情を浮かべている凛に、「家族と来たんだけど、居心地悪くて」と私は視線を逸らしながらそう言った。
他の人には絶対にこんなこと言わないのに、何故か凛には素直に言えてしまった。
凛「…あんま1人でうろつくなよ」
ふと視線を戻せば、凛は呆れた様子でこちらを見ていた。しかし、気の所為かもしれないけど、その目は少しだけ私を心配しているように感じる。
隣にいた後輩くんも、凛をみて驚いている様子だった。
凛「で、何だよ」
『あ、えっと…』
咄嗟に呼び止めてしまったため、言葉はまとまっていない。
でも、沢山聞きたいことがある。
私はグッと手を握った。
今までみたいに何もしなかったり、逃げたりはダメだ。江みたいに、進んで動かなければ何も変わらない。
『凛は、ハルと泳いで…ハルに勝って、嬉しかった？』
私の質問に、凛は何も答えない。その代わりに顔を顰めて鋭い視線をこちらに向けた。
凛「何が言いてえ？」
低い声にビクリと肩が跳ねた。
怒らせてしまった…そう思うと言葉が続かない。
そんな私に、凛は「どうだっていいだろそんなの」とその場を離れて行こうとした。
『ま、まって！』
引き止めた私に、凛の冷たい目が再び向けられた。
そんな凛の目は少し怖いけれど、これだけはどうしても聞きたかった。
『オーストラリアから帰ってきたら、話があるって言ってた。それって、何？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 550人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アコ
| 作成日時：2021年10月24日 2時
