【Free!】待ち人２ (ページ38)

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特に行こうとは思っていなかった夏祭り。
それでも予定がないと言ったら、お母さんにあれよあれよという間に支度をさせられ、気づけば浴衣まで着せられていた。

てか、この浴衣なに。新品っぽいけど買った記憶ない。

楽しそうにはしゃぐ妹と、その手を握るお母さんと今の父。その数歩後ろを歩きながら、3人に気づかれないように小さくため息をついた。

時折、こちらの様子を伺うようにちらりと振り向く今の父に、なんとも言えない気持ちになる。

「A、イカ焼き食べる？」

イカ焼きの屋台を指さしながらお母さんが聞いてくるが、私は「いらない」と首を横に振った。

様々な屋台が並ぶここら一帯は、そこらじゅうの食べ物の匂いが漂ってくる。
食欲をそそる匂いなんだろうけど、私はもう匂いだけでお腹いっぱいだ。

「ねぇねもたべよ！」

両親の手から離れてこちらに駆け寄ってくる妹が、私の手を掴んで引っ張った。

「じゃあ半分こしましょ」

グイグイと引っ張ってくる妹の手を振り払うことなんて出来ず。私は仕方なくお母さんのその言葉に頷いた。

イカ焼きを食べながら、イカ掴みの大会に出場した今の父をボーッと眺める。妹とお母さんは前の方で応援していた。

渚「あ！Aちゃんだ！」

急に名前を呼ばれてそちらを見れば、水泳部の4人がいた。ハルと真琴は私服だが、渚と怜は浴衣を着ている。

怜「こ、こんばんは」

渚「浴衣似合うね！すっごく綺麗だよ！」

『…ありがとう』

ここまで真っ直ぐ言われるとすこし照れるなと思いながらも、2人も似合ってるよと返した。

渚「誰と来たの？」

真「あ、もしかして噂の彼氏…」

真琴の呟きに「えぇ！？Aちゃん彼氏いるの！？」と渚が少し大きな声を出した。

面倒臭くなるような余計なことを言ったな…と真琴をジトリと見れば、彼はハッとしたように自身の口を塞いだ。

『家族と来たの』

私の答えに、何故か渚は残念そうな声を出し、怜は驚いていた表情を和らげた。
真琴は申し訳なさそうに眉を下げ、ハルは安定の無表情。