【Free!】待ち人２ (ページ29)

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『ランニングの途中だったんでしょ？私は大丈夫だから…』

凛「大丈夫じゃねぇだろ」

ギュッと手を握る力が強くなった気がした。

凛「なんで海にきた？お前は…大丈夫じゃねぇだろ」

そう言われて、私は下唇を軽く噛んだ。

『もう、大丈夫なの…大丈夫だから来たんだよ』

自分で言ってて、まるで自分に言い聞かせているようだった。
でも、本当に大丈夫だと思ったからここに来たのだ。きっとあの夢を見なければ今だってギリギリまで寝ていて、今日も昨日と同じように練習を見て…この合宿を無事に終了する。

そのはずだったのに、きっとあの雨の音と波の音を聞いてしまったせいだ。

私の大丈夫はこんなに簡単に崩れてしまうものだったのか。

そこでふとポケットに入れていたものを思い出して、空いていた方の手でそれを取りだした。

凛「なんだよそれ」

『…お守り。これがあるから、もう平気なの』

小さな巾着袋。
それをぎゅっと握れば中に入っているボタンの存在を感じた。
無意識に入っていた体の力がスっと抜ける気がする。

顔をあげれば、凛は眉間に皺を寄せて不満そうな表情を浮かべていた。

凛「分かった…でも宿までは送る」

もう断ってもどうせ着いてくるだろうと、私は仕方なく頷いた。

凛「江に頼まれたからって無理してなんでもやるなよ」

『別に、無理してないよ』

どうやら私の情報は江が全て話したらしい。
この合宿だけでなく、もしかしたら水泳部に入ったことも江が頼んだから入ったと思っているのかもしれない。