【Free!】待ち人２ (ページ21)

今日:23 hit、昨日:29 hit、合計:138,525 hit

－６４－ページ21

合宿当日

学校よりもかなり早い時間に起きて、昨日準備していた荷物に入れ忘れがないかチェックをする。

合宿だしお洒落する必要もなく、Tシャツに短パン、薄いパーカーとシンプルな服装に着替えた。

まだ寝ているであろう家族が起きないようにそっと階段を下りると、何故かリビングの明かりがついていた。

「おはよう、A」

リビングに入れば、お母さんがキッチンに立っていて、入ってきた私に気づくと挨拶をする。
驚きながらも私も挨拶を返す。

「おにぎり持っていきなさい。空腹で船に乗ったら酔っちゃうわよ」

そう言ってお母さんが手渡してきた袋には、その言葉通りおにぎりが入っていた。

「あなた少食だから…もう少し食べて欲しいんだけどね」

『…ありがとう』

「お父さんにも、会いに行くんでしょ？一緒に食べてね」

その言葉に頷きながら、私はバッグにおにぎりの入った袋を入れた。

靴を履いて、玄関まで見送りにきたお母さんを見れば眉を下げてこちらを見ていた。
きっとこの心配そうな表情は無意識なんだろう。

『…大丈夫。ちゃんと帰ってくるよ』

私がそう言うと、お母さんはハッとして少しだけ泣きそうな顔をした。

「分かってる。気をつけて行ってらっしゃい」

『うん、行ってきます』

外に出れば、まだ日は出ていなくて薄暗かった。

_____…

お父さんのお墓を綺麗にしてから、バッグから取り出したおにぎりをそっと置く。

『お母さんのおにぎり、一緒に食べよ』

こんな時間にお墓参りしている人なんているわけもなく。何も気にせずに私はお父さんに話しかけた。

『久々に船に乗るよ』

話しかけてももちろん何も言葉は返ってこない。
だけど優しい風が吹いた気がした。

『うん、もう大丈夫』