【Free!】待ち人２ (ページ11)

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江から聞いていた。

毎年お正月には帰ってきていたこと

先月帰国していたこと

それなのに、一度でも会いに来てくれるどころか連絡すら無かった。

『…凛』

凛の視線を追うとハルをじっと見ていた。

そんな彼の名前を呼べば、ゆっくりとこちらに向けられる視線。

一瞬ではなく、今度はしっかりと私のことを見ていた。

あの頃とは違う輝きのない目に、口を一文字に結んでいる。

記憶の中の凛とは全く変わってしまった姿に、私は目を細めた。

一文字だった口が少し動く。

じっと凛の言葉を待っていれば、バシャーンっと今までと違う音がプールの方からして、反射的に凛も私もそちらを見た。

下を見て何があったのか確認する。
ハル、真琴、葉月くん、江…竜ヶ崎くんの姿が見えなくて、プールの中に影があるのが見えた。

それでも上がってこない影を見て、ドクリと心臓が大きく跳ねると同時に、サーっと血の気が引くのを感じた。

ハルがプールに飛び込む。

あの時と同じ光景が頭の中をよぎった。
ギュッと胸元を掴んで、じっとプールを見つめる。

葉月くんも潜って、ハルと同じ方に泳いで行くのが見えた。

そして2人に抱えられて上がってきた竜ヶ崎くん。
咳き込みながらもしっかりと意識があるのが分かり、無意識に止めていた息を吐き出した。

大きく息を吸って、早くなった心臓を落ち着かせる。
胸元を掴んでいた手をふと見れば、少しだけ震えていた。

凛「…A？」

名前を呼ばれてハッとする。

凛「お前…」

眉間にしわを寄せ、こちらを見る凛がゆっくりとこちらに手を伸ばしてきた。

『…様子見てくる』

その手から逃げるように、私はその場から離れて階段の方に向かった。

もう大丈夫だと思っていたのに、思い出してしまった嫌な記憶。

こんな姿、見られたくはなかった。

凛も江も強く生きてる。

私だけが未だに引きずってしまっている。

グッと握った手は、まだ微かに震えていた。