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もう何年も踏んでいなかった砂浜は歩きにくく、そんな私を夏也先輩が支えてくれる。

ゆっくりと近づいた海は、昔見た景色のままだった。



目を閉じれば、小さい頃の記憶が頭の中を流れる。
それと同時にあの夢も思い出して、つい夏也先輩の手を握ってしまった。



夏「大丈夫か?」


『…はい』


目を開けて真っ直ぐ海を見つめる私を、夏也先輩はホッとした様子で見る。


夏「連れてくるのは正直迷った…けど、ずっと海の印象が夢の中のままじゃだめだろ」



あの時からこんなに近くにある海をずっと避けていた。
お母さんも怖がっていたから。

宗介や凛は私といる時はなるべく近づかないようにしてくれていた。


だから、こんなに近くで見るのは本当に久しぶりだった。


夢の中の真っ黒な海とは違う。
幼い頃にお父さんとお母さんと一緒にきた、太陽の光を反射する海が目の前にはあった。


それを見たら、何故だかポロポロと涙が頬を流れた。


『夏也先輩、ありがとうございます』


幼い頃は海が大好きだった。
入って遊んだり、船に乗せてもらったり。

ずっと忘れていた記憶が蘇ったようだった。


夏「今後また怖いって感じた時は、今日のこと思い出してくれると嬉しい」


そう言って夏也先輩は笑いながら私の頬の涙を拭った。
そんな夏也先輩の顔を見たら、ギュッと胸が苦しくなる。


『夏也先輩…私、夏也先輩のこと…』


その続きは喉でつっかえて出てこなかった。
言ってはいけないとわかっていたから。


先輩とはきっともう、会えないから。


そんな私を、夏也先輩は笑顔を消して真剣な顔で見ていた。


夏「…俺もだ」


夏也先輩のその言葉を聞いて、また涙が溢れた。
今度は夏也先輩が拭ってくれても、次々と流れていく。


きっとお互いに伝えたい言葉は同じ。
だけどハッキリと伝えられないのが辛かった。


夏也先輩の両手が私の頬を包んで、今までで1番近くで夏也先輩に見つめられた。
ゆっくりと目を閉じれば、一瞬だけ唇に触れて離れていく。


『…また、会えますか?』


夏「もちろんだ。会いに行く…Aがいなかったら、探しに行く」


そこまでしてくれるのかと、つい笑ってしまった。
そんな私につられたように夏也先輩も笑う。



『…今までありがとうございました。行ってらっしゃい』


夏「あぁ…行ってくる」

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設定タグ:Free! , ハイ☆スピード! , 松岡凛,山崎宗介,桐嶋夏也   
作品ジャンル:アニメ
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アコ(プロフ) - トキヤloveさん» コメントありがとうございます!更新させていただきました!楽しんもらえると幸いです! (2021年10月12日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - アコさん» こんばんは 続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月10日 21時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» 初めまして。コメントありがとうございます!また応援もありがとうございます!引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年10月6日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - こんばんは 初めまして、トキヤloveといいます。続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月4日 20時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - みらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張ります! (2021年9月23日 1時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アコ | 作成日時:2021年9月17日 0時

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