【Free!】待ち人

中１−夏− ページ44

1年の夏の地区大会。
みんな頑張って練習したけれど、メドレーリレーは3位という結果だった。


"来年の夏は必ずこのチームで勝つ"


それを目標に、またみんな更に練習を頑張っている。


旭の提案で学校に泊まり込む合宿を行うことになり、私は夕方まで参加をして、みんなの練習のサポートをした。

旭の考えたメニューをみて、流石に無茶じゃないか？と言ってみたが、「来年の夏勝つためにはこれくらい必要なんだよ！」と言われてしまった。



その合宿から郁弥もハルの真似をしてフリーを泳ぎだした。


どんどん速くなるハルに、郁弥ももっと頑張らなければと思ったのだろうか。

部活が終了しても泳いでいる郁弥に気付き、片付けの手を止める。先程、旭が話しかけていたはずだが、まだ練習を続けるようだった。


その時だった…



郁弥の様子がおかしくなり、急に水に沈んでいってしまった。



『郁弥っ！』


ハルがプールに飛び込み郁弥を助けたが、郁弥は目を開けない。
それを見たら、周りが騒ぐ声が遠のき、頭が真っ白になった。

呼吸が浅くなり、息が苦しい。
心臓の脈がどんどん速くなる。


動かなきゃいけない。
何か私にできることをしなければと思ったのに、足が全く動かなかった。



尚「A？」


肩に手を置かれて、尚先輩が私の顔を覗き込んだ。


夏「どうした！？」


尚「大丈夫、Aは任せて。夏也は早く郁弥の方に行きな」


尚先輩に支えられて、ベンチに座る。
私を落ち着かせるように声をかけてくれる尚先輩の言葉通りに、ゆっくりと呼吸するように意識をした。


苦しいからか、無意識に涙が次々と溢れた。

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