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やっと立ち止まれた頃には、私の息は喋る余裕が無いほど上がっていた。
座り込みそうになるのを堪え、膝に手をついて頑張って息を整える。
郁「なんで…みんな来てるんだよ。Aまで…」
旭「当たり前だろ!心配するだろうが!」
郁「なんでっ、」
郁弥が声を震わせてそう呟く。
未だに息は上がっているが、私は膝から手を離し真っ直ぐに立った。
真「だって、チームだから」
昼に私も言われた言葉。
郁弥にも響いたのか、肩を震わせている。
真「あれ、あそこって…」
郁「僕と兄貴が通ってたSC…二人で一緒に世界出たいねって、頑張ってたんだ」
みんなの視線の先には、板東スイミングクラブがある。
それを見ながら、"世界…"と心の中で呟いた。
郁「なのに兄貴中学になった途端、僕を突き放して…理由を聞いても、"世界を広げろ、仲間を作れ"としか言われなくて」
郁「兄貴は僕が邪魔になったんだ。そんな兄貴がどうしても許せなかった」
真「それはきっと違うよ。自分でちゃんとできるようになって欲しいと思ってるだけなんじゃないかな?同じお兄ちゃんの立場からしたら、ちょっと寂しいけどね」
遙「夏也先輩はお前のこと気にかけてた。嫌われてもしょうがないって…寂しそうに言ってた」
『郁弥がいない所で、尚先輩や私に郁弥の様子聞いたりしてるよ』
これ、言っていいのかなとふと思ったが、もう言ってしまったことは仕方がない。
真「やっぱり、弟のことが嫌いなお兄ちゃんなんて居ないよ。郁弥、君はひとりじゃないよ」
郁「ずっと、兄ちゃんが居ればいいなって…兄ちゃんさえ居れば、仲間とか、友達なんかいらないってっ!」
郁弥の涙が溢れて、足元にポタリポタリと染みを作っていく。
郁「だから!兄ちゃんが居なくなって、ずっとひとりで泳いでたんだっ、本当は、ずっとっ…寂しかったっ」
郁弥のその言葉を聞いて、私の隣に立つ遙が「寂しい…」と呟いた。
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アコ(プロフ) - トキヤloveさん» コメントありがとうございます!更新させていただきました!楽しんもらえると幸いです! (2021年10月12日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - アコさん» こんばんは 続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月10日 21時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - トキヤloveさん» 初めまして。コメントありがとうございます!また応援もありがとうございます!引き続き楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年10月6日 0時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
トキヤlove(プロフ) - こんばんは 初めまして、トキヤloveといいます。続き楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2021年10月4日 20時) (レス) id: 321a17ab2b (このIDを非表示/違反報告)
アコ(プロフ) - みらさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張ります! (2021年9月23日 1時) (レス) id: b7dc70b3b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アコ | 作成日時:2021年9月17日 0時