第44話 新たな技への挑戦 ページ44
「監督……なんで止まったんですか?」
騒がしかったキャラバン内が静かになり、
夏美が瞳子監督に問う。
席を立ちあがった監督はこちらを振り返ると、
小さく笑みを浮かべながら言い放った。
「狭いバスに乗ってばかりじゃ、
体がなまるわ。トレーニングをしましょう」
山の中、大自然を相手にトレーニング。
窓の外へと視線をやった私は、その言葉に気分が盛り上がった。
「あっ、えと、皆さんのためのトレーニングメニューもあります!」
バインダーを片手にあげながら言った春奈。
どこかたどたどしい様子を見て、
ちょっとした興味から、彼女の心像を読み取ってみる。
“戸惑い”……“嘘”。
「ぃやったあ!」
有人の後ろに座っている守が、嬉しさに声を上げた。
──いつもなら、仲間たちもそれにつられて声を上げるはずだ。
だが、あまりの静けさにさすがの守も違和感を感じ
みんなの顔を見渡す。
「おい、みんな?」
「……いいわ」
監督は小さく溜息をつきながら、
春奈の持っていたバインダーをひょいと取り上げる。
ちらり、と紙面を見た後、後ろに投げ捨てた。
「だったら、自主トレをしてもらうわ。……この山の自然を相手に」
「……監督のメニューよりはマシだろうさ」
「そ、そうッスね」
仲間たちの方へと振り返った染岡君が言う。
それに対して、壁山君は気まずそうに返した。
「よおし、山だ、自然だ、特訓だぁーっ!」
拳を上へと突き上げて、守が叫んだ。
ま、やらないよりかはずっと良いよね。
自然相手なら、やれることはたくさんある。
〜･〜･〜
みんなは早速、それぞれ組を作って別れ
特訓をしに行ったようだ。
所々からそれらしい音が耳に聞こえてくる。
私はさっさとボール片手に行ってしまったので
一人だが、問題はない。
特訓としてやることは、新必殺技を作るか、修得済みの技に
磨きをかけるか、あるいは基礎体力を更につけていくか。
私自身の基礎体力の比較としては持久力の無さが
問題ではあるが、今はその気にはなれない。
それに──。
……と、様々な理由があり新必殺技のイメージを組むことにした。
大きな滝を目の前にして、ボールを両手に持ち、
視線は滝の下に広がる水面へと送る。
「(私が、初めてものにした必殺技……アイストルネード。
氷……元は水だ。イメージを作るには、名前から……)」
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作者名：フェイル | 作成日時：2014年8月1日 0時
