第43話 戦う者、守られる者 ページ43
「……仲間がいるから、私も戦えるんです」
再び総理の方へと視線を戻し、笑いながらそう言い終えた。
総理は驚いたような顔をしていたが
ふと表情を笑みに変えると、頷き返す。
「そうか……君の答えが聞けて良かったよ。ありがとう」
「はい。……では、行ってきます」
お礼を言われたので、質問は終わったのだと察し
私はそれだけ言い残すと、ようやくキャラバンに乗る。
乗り込んで、すぐ目の前で守が待ってくれていた。
「もう良いのか?」
聞かれて、私は塔子と目を合わす。
向こう側から頷きを返されて、更に私は守の問いに頷いた。
「うん、大丈夫」
「そっか。……よーし、出発だ!」
目的地は、北海道。
キャラバンはまた、移動を始める。
……結局、時間の問題で財前総理に
肝心なことを聞けなかったが、仕方がないだろう。
〜･〜･〜
キャラバンの中、全員が大人しく椅子に座ったまま
隣同士の者と話に花を咲かせた。
私と有人もその中の一人だったが、どうも自分たちは
話を帝国の方へと持っていきがちなようだ。
「……そういえば、有人?」
「?」
「大変な騒動続きでタイミングを逃したけれど……
全国大会も終わったし、帝国には……戻らないの?」
有人は、あくまで世宇子を倒すために雷門に入ったのであって
決して帝国が嫌になったからなんて理由などではない。
そして本来の目的であるそれは達成した。
ならば、もう帝国に戻っても大丈夫なのではないか。
──私がそう願っていたわけではないのだが、ただ心配だったのだ。
聞いてみると、有人は驚いたように言葉を詰まらせる。
「……そう、だったな。
だが……やはりエイリア学園を放ってはおけない」
「戦うつもりなんだ?」
「今更だ……それに、お前も戦うつもりだろう。
ならば、俺はお前を守るためにここにいなければならない」
ここに居た方が守りやすいからな、と
小さな笑みを浮かべながら言った。
だから私もつられて笑みを浮かべる。
「それは……嬉しいけれど。
有人は、なにか理由をつけなきゃ雷門にはいられない?」
「……いや、そうでもない」
視線を外すと、なにかを思い出すかのような仕草を取った。
私も視線を前方へと移し、自分の記憶を探る。
──雷門の皆、帝国の皆……兄の姿、
それと……と、そう巡っていた時。
突然、キャラバンが山の中で停止してしまった。
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作者名：フェイル | 作成日時：2014年8月1日 0時
