第34話 戻れない? ページ34
「……Aさん」
「っ、はい」
更に声をかけられて驚いた私は、少し間を置いて返事をする。
今度はなんだというのだ、という視線をみんなが
向けているのを感じながら、次の言葉を待つ。
「彼、荷物を忘れて行っているわ……届けてあげて。
それと、後で私の元へ来て頂戴。話があるわ」
「え…………」
言い残すと、またさっさとどこへやらと行ってしまう。
……監督に言われて思い出した私は、
なにも言わないまま咄嗟にキャラバンの中に戻る。
「あっ、おい、A!」
誰かに呼び止められたが、そのままキャラバンに乗り込んで
中を見渡し、最後に助手席へと視線を固定させる。
そこには一つだけ、誰の物かわからない荷物があった。
みんなが同じ鞄を使っているからわからなかったのだ。
しかし、監督のあの言葉でわかった。
これが豪炎寺君の荷物なのだ。
「…………」
無言のままその荷物を持ち上げて肩にかけると、
キャラバンを降りる。
「おい、A。本当に行くってのか?」
鞄を肩にかけている私を見て、一行は戸惑う。
驚いた土門君に問われて、私は豪炎寺君と守が
消えて行った先へ視線を移しながら答える。
「……きっと戻らないよ、彼は」
「え?」
「いや……戻れない、のかな……わからないけれど。
やっぱり、なにか理由があるんだと思う」
その肝心の理由がわからないけれども。
無言になった仲間たちを見た私は、
鞄を持ったまま守の後を追いかけた。
〜･〜･〜
「豪炎寺、お前……ほんとに行っちゃうのかよ。
ほんとにこのまま行っちゃうのかよ、あいつらに負けたままで!」
「…………」
「……悔しくないのかよっ!」
背をこちらに向けたまま黙ったままでいる
豪炎寺君に向かって、怒鳴る守。
その声は多少離れた場所からでも十分に聞こえてきた。
「学校滅茶苦茶にされて、仲間をあんな目に遭わされて!」
「…………」
「豪炎寺ッ!!」
叫んでも叫んでも返事はこない。
ただ沈黙が続くばかりだと思ったが、
それをさえぎったのは、遅れてやってきた私の声だった。
「戻れないんでしょ」
「「!!」」
これには、豪炎寺君も驚いて振り返ってくれる。
彼らの視線の先には、ゆっくりと歩きながら
近くまでやってくる私の姿が見えるはずだ。
「今はまだ、無理なんだよね」
「……ああ。すまない、円堂、A……俺はお前たちとは戦えない」
「なっ……、豪炎寺……」
第35話 エースストライカーの離脱→←第33話 エイリア学園と彼の謎
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェイル | 作成日時：2014年8月1日 0時
