第12話 黒スーツのSP ページ12
壁山君の大声で集まった皆の前にあるのは
水の中からあげられた、あの黒いサッカーボール。
私の目が、そのボールの場所を感知したのだ。
そして、地面に置かれたままのボールを
守が持ちあげようと手をかける。
──そのボールは、守の手によって確かに宙に浮いた。
けれど、すぐにドシンッと音をたてて落ちる。
「お……重い……!」
守がボールから手を離したせいだ。
皆が唖然としている。もちろん、私も。
「こんなものを軽々と蹴っていたのか……!?」
驚きのあまり、それ以降沈黙が続いてしまう。
守も出す言葉が見つからないようだった。
それはまた、私も同じだったけれど。
皆が黙ったままボールを見つめていた、
その時に、聞き覚えのない声が私達に向けられる。
「全員動くな!!」
「…………!?」
驚いて声のした方を見ると、
黒いスーツを身にまとった十人の大人達が
こちらを見ている。
「もう逃がさんぞ、エイリア学園の宇宙人!」
「えっ?」
「俺達のこと……?」
守と風丸君が疑問の声を出す。
他の皆も、顔を見合わせた。
「財前総理はどこだ! どこへ連れさった!」
「え、あの、ちょっと……」
「黙れ! その黒いサッカーボールがなによりの証拠だ!」
「ち、違う! 違います! これは池に落ちてて!」
「とぼけるつもりか」
「本当です!」
守が必死に説得している中、
有人が私に小声で話しかけてくる。
「警察には、話が通ってるんじゃなかったのか」
「その筈なんだけどね」
「……随分呑気な物言いだな……」
「──面白そうだし……、大丈夫だと思うよ」
苦笑いをしながら返せば、
有人は呆れたように小さく肩を竦めさせていた。
そう言い合っている間にも、向こうの話は進むようだ。
「我々は総理大臣警護のSPだ」
「だからと言って、いきなり宇宙人
呼ばわりするなんて、失礼じゃありませんか!」
風丸君も否定をするが、
相手は聞き入れようとしてくれない。
それにしても、大人十人か……
「宇宙人はどこだ!」
考え込んでいると、女の子の声が聞こえてきた。
遅れてやってきた女の子は、私には見覚えがあった。
「だから、俺達は宇宙人じゃないって」
否定する守に一瞬、驚いた顔をして私達を見まわす。
けれど、すぐにニッと笑みを浮かべた。
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作者名：フェイル | 作成日時：2014年8月1日 0時
