第11話 FWライバルの不穏 ページ11
勝負を始めようとしている私達を、
有人は近くで黙って見守っている。
「ルールは以前と同じように、ゴールはそことあっちね」
ボールを奪い合って、シュートを先に決めた方が勝ち。
シンプルだけど、勝負はつきやすい。
「あぁ……行くぞ」
豪炎寺君からスタート。
向き合った私達は、目が合ったのを合図に
ダッと地を蹴って走り出す。
すぐにボールの奪い合いに転ずる。
ここが勝負の分かれ目。
──だというのに。
私は相手の様子に、気付かぬ内に苛立ちを覚えて目を細める。
「はぁッ!!」
「ッく……!!」
容赦なくスライディングをかけて、呆気なくボールを奪った。
その流れに、有人も訝しげに眉をひそめる。
ボールを奪われた豪炎寺君は、
すぐに体をひるがえしてボールを奪い返そうとした。
けれどそんな彼の動きには、
私や有人から見れば明らかに無駄な部分が見えたのだ。
向かってくる彼を私は体だけ横に避けると
ボールを軽く宙に蹴り上げ──
豪炎寺君の腹に思いきり打ち込んだ。
「ぐッ……は!?」
当然、強い蹴りを受けた豪炎寺君は
地面に転び、痛みにうずくまる。
「豪炎寺!? A、やり過ぎだ!」
それまで黙っていた有人も、
驚いて声をあげる。
「ッ……A……?」
「──、相手を誘っておいて……何を手加減してるの? 私はそんな事を
頼んだ覚えはない。私をバカにしてるのか、からかってるのかどっち?」
「手加減なんかしていない、俺は本気だ!」
「戯れるな!」
「おい二人共、いい加減に落ち着け……!」
相手に掴みかかる勢いだった私は、
有人の割って入った手に止められる。
「ッ……もういいよ、アンタを
ライバルだと認めた私が愚かだった……!」
私の涙声交じりに言ったその発言で、
豪炎寺君の瞳は大きく揺れる。
──その瞬間、どこかからか悲鳴が聞こえてきた。
「「うわぁぁああ!!」」
壁山君と目金君の声だ。
声のするほうを見つめていると、
森の中の方から突然現れたと思いきや
バシャァン!!
傍にあった水の中に落下してしまった。
「……なにをやっているんだ……?」
慌てて気を取り直した私達は、
そちらを凝視して問う。
「…………?」
「どうした?」
有人に聞かれた私は、
水の中を凝視していた。
「……あれ、あそこ! なにかあるみたい。壁山君、見れる?」
聞いてみた次の瞬間、壁山君が水の中で暴れ出す。
そしてようやく自ら顔を出すと声をあげた。
「あ、あったッスー!!」
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作者名：フェイル | 作成日時：2014年8月1日 0時
