11話 ページ11
＊
あ、と爆豪は顔を上げてAを見た。3年のブランクがあろうと親友(コイツ)のそこは変わっていないと感じていたからだ。爆豪の予想通りにそれまで友好的に接していたAの雰囲気が少し変化する。
「炎(ひだり)が憎い？だから使わねぇって？」
Aは轟の事情を知らない。だから轟がどんなきっかけで、想いで、半分の力でヒーローを目指すことを決意したのか想像もつかない。ただ、他人にはどうしようもない何かを抱えていることだけは分かった。しかしそれは轟も同じだ。轟もAの事情を知らない。火を扱う個性の持ち主ということしか轟はAの情報を持っていない。
「あぁ。だから俺は火を持つお前に、右で勝つ。関係ねえのに悪いがそれだけ言いたかった。時間取らせた。」
「おい待て言い逃げか。」
さも話は終わりだと自席へ戻ろうとする轟をAは呼び止めた。振り向いた轟の目にはもう嫌悪は見えない。A自身ではなくAの個性にのみ、その暗い何かがあるのだろうということは簡単に読み取れた。
個性とは何であろうか。辞書を引けば黎明期より言われてきた模範解答は記載されているが人によって答えは違う。身体能力の一部。自身。親からの贈り物。商売道具。研究対象。生活を役立てる便利なもの。不必要なもの。虐めの原因。犯罪の手助け。病気の一種。己の価値観。存在意義。様々な捉え方が存在する。
名字Aにとって個性とは"A自身"だ。轟が憎いと否定しているのは自身の火だが、火自体を非難しているようにも思える。実際話が聞こえていた爆豪や近くにいるクラスメイトたちも、轟は火が嫌いなのかと認識した。つまり、Aは轟にA自身を否定されたように感じたのだ。自分を否定されて怒らないのは果たして個性的なこのクラスの中でも何人いるだろうか。
「お前の事情は知らねぇがそっちがその気なら、良いぜ、受けてたってやるよ。実技で当たるのが楽しみだ。」
「全力で来てくれ。そうじゃねえと意味がない。」
今度こそ去って行った轟の背をAは細めた目で見ていたがすぐに玩具に飽きた猫のようにフイと逸らした。一触即発の雰囲気が消え、まさに今から決闘が始まってしまうのではと構えていたクラスメイトたちは知らず知らずの内に止めていた息を吐く。いつの間にか保健室に行った緑谷を除いた全員が教室に集合していた。
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緑猫(プロフ) - 東雲さん» 大変遅くなりました…！コメントありがとうございます！そろそろ続編解禁ですね。不定期更新ですが気長にお待ちいただけると幸いです (2020年5月10日 20時) (
レス) id: 3889cacc49 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - お話の方とても面白かったです！続編の方楽しみに待ってます。 (2020年4月28日 17時) (レス) id: 69e2a17ecb (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - カナデさん» ご指摘＆コメントありがとうございます！申し訳ございません、修正させていただきました。飄々とした子を目標としているのでそう捉えられていてニヤニヤしております。不定期更新ですので気長にお待ちいただけると幸いです (2020年3月14日 21時) (レス) id: 3889cacc49 (このIDを非表示/違反報告)
カナデ(プロフ) - 23話が２つあって、24話が抜けてますよー笑。夢主くんかっこいいですね！いつも応援してます。更新頑張ってください！ (2020年3月14日 16時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 黒武さん» ご指摘＆コメントありがとうございます！あまりのいい加減さに自分でも吃驚しています…修正させていただきました。お気に入り登録とても嬉しいです！！続編は50話まで解放した後下書きを外しますのでお待ちください！ (2020年3月5日 5時) (レス) id: 3889cacc49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2020年1月10日 16時
