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【さよなら】
*
背を向け歩き出した夏油に、手を伸ばした。
夏油の手は酷く冷たくて、私に向ける視線も前とは違った。
夏油
「…離してくれA。
A
「………。」
夏油を前にして、言葉が出ない。
彼の目は、もう覚悟を決めた目だった。
私なんかが言葉をかけてもきっと何も変えられない。
夏油はもう、決めたんだ。
離したくない、行かないで、ここにいてよ。
皆で一緒にいようよ。
感情で頭がごちゃ混ぜになる。
なんて、なんて言えば良いんだろう。
何を言えば、夏油の心に響くの。
ふと、振り向いて五条を見た。
五条は、酷く悲しそうな顔をしていた。
それを見て、夏油にかける言葉が決まった。
夏油
「…A、そろそろいいかな。」
「邪魔するなら君でも容赦しないよ。」
A
「…皆でいる毎日が楽しかった。」
「ふざけて騒いで、遊んで、叱られて…。」
「本当に楽しかった。」
「夏油と一緒にいられて良かった。」
「…皆と、毎日過ごせて楽しかった。」
夏油
「……私もだよ。」
ギュッと手を握り返される。
夏油を応戦する言葉は言えない。
五条もその言葉は言えない。
その代わりに私が、五条の分もお別れを言う。
A
「元気でね、夏油。」
「……どうか、死なないで。」
夏油
「…ありがとう、A。」
「さよなら。」
握っていた手が離され、夏油は雑踏に消えていった。
A
「……っう。」
夏油の姿が見えなくなった瞬間、我慢していた涙が溢れてきた。
悲しい、寂しい、辛い。
夏油にこんな選択をさせた奴らが憎い。
色んな感情が溢れて来て、涙が溢れる。
地面に座り込んで泣きじゃくる私の背に五条の手がそっと触れた。
*
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作者名:mito | 作成日時:2022年1月27日 2時