ゼロの除算 ページ8
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二週間が経ったときには、秋葉の怪我は日常生活に支障が出ない程度に治癒していた。降谷も驚異の回復力で、多少ならば立って歩くことが出来るほどになっている。
「リハビリをすれば元に戻るそうだ」
「後遺症がなくてなにより」
「僕の体が頑丈なのは、君もよく知っているだろ？」
秋葉が安堵したように言うと、降谷は苦笑いをしながら答えた。
「それで」
降谷は何気ない風を装って、穏やかに切り出した。
「僕に何か話すことがあるのか？」
聡明な彼の青い瞳は胸の内をすべて見透かしているようで、秋葉は思わず目をそらした。呼吸することが急に難しいことのように感じる。
彼は急かすことなく返事を待った。彼女と違い、視線を動かすことはなかった。
そんなことはありえないのに、静かな病室に風がそよいだ気がした。それは二人の間をすり抜け、睫毛を揺らす。
「……いいえ、何も」
ごく自然な言葉だった。抵抗はなかった。心がすっと軽く温かくなるのが分かる。言葉にした瞬間、それは事実になったのだ。
「そうか」
彼はわざとらしく考え込んでみせた。
「赤井に聞いた話と違うようだが」
「……赤井さんは夢を見ていたのかもしれない。ないものはないのだから」
もう振り返ることは二度とない。前を見て歩くと決めたのだから。
降谷は穏やかな口調のまま秋葉に言った。
「もう少し近くに来てくれるか」
その言葉通り、秋葉は座っていた丸椅子を少し降谷のベッドの際に近付ける。その途端、降谷は彼女を両腕で抱き締めた。
「降谷？」
「こうすればよかったんだよな。推し量るとか、回り道なんかしないで」
自分が馬鹿らしくなる。彼は小さく笑った。
「散々苦労した末の成果だ。まずはそれを噛み締めるべきだった。僕はもうバーボンじゃない、秘密主義でなくて済む」
軽やかな表情だった。解放の喜びに満ち溢れている。
多大な犠牲の上にこの結果がある。それは憂うことであり忘れてはならない。しかし結果を喜ぶことで、犠牲はより強く意味を持つ。
「みんな……命を落とした価値があったと、納得してくれるだろうか」
秋葉は恐れるように囁いた。
「納得させる。僕たちが、これから。風見も毛利先生も赤井も、そして君も一緒にな」
そう言って抱き締める腕に力を込めた降谷は、鋭い声を挙げた。
「痛っ！ ……傷のことを忘れてた」
「……あなたって人は」
二人は本当に久し振りに、声を出して笑った。
Q.E.D
作者の勝手な裏設定
降谷さんはクールで言葉足らず気味。
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長谷夏子(プロフ) - 笑福さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。結末に向けてラストスパートをかけていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 16時) (
レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
笑福(プロフ) - 再びコメント失礼致します。やはり長谷さんの書く小説は引き込まれる内容でとても面白いです!続き頑張ってください。最後までお付き合いします\( *´ω`* )/ (2018年11月10日 14時) (レス) id: ada93b3781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長谷夏子 | 作成日時：2018年10月18日 19時
