善悪と正義 ページ6
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翌朝、秋葉は鋭い視線の赤井に詰問されていた。閉ざされた病室の中でそれぞれの思惑が交錯する。
「何を期待しているのか大方は想像がつくが、俺は譲らん」
冷たい声音で赤井はきっぱりと言い切った。だが彼女はそれに気後れすることもなく、冷静な態度を崩しはしない。
「あなたのおっしゃることは『夢』でしょう？」
「ああ、そうと思い込む努力はした」
赤井は涼しい顔でそう言った。秋葉の整った眉がひくりと動き、口許がきゅっと真一文字に結ばれた。
「降谷くんにちゃんと話せ。彼がその信頼に足る男だということは、君が一番よく分かっているはずだ」
「ええ、もちろんです。しかしそれとこれとは話が違う」
「どう違うと言うんだ？」
「彼の問題ではない、私の問題なのですから」
弾丸のように言葉が飛び交い、室内にはピンと緊張の糸が張り詰めている。常人ならば冷や汗のひとつもかきそうなほどであったが、二人は顔色一つ変えずに対峙している。
「……君も頑固だな」
「おかげさまで」
素っ気ない態度の秋葉は職務中よりもさらに冷徹そうに見えた。頬や唇に差している赤みが、薄れているせいかもしれない。化粧というのは偉大らしいと赤井はふと思った。
だが強気なその様子とは裏腹に、切れ長な目には葛藤と憎悪が揺らめいている。
「何を躊躇うことがある、言うべきなのは君だって分かるだろう」
「理解はしています。ですが、実行は出来ない」
「なぜだ」
その瞬間、彼女の眉根がぎゅっと引き絞られる。瞳の中の憎しみが燃え上がり、そして急に冷えた。
仮面のように彼女の感情を覆い隠していたものが取り払われたように見える。彼女は静かな口調で言った。
「私には勇気がないのです。忌々しい過去と、もう一度向き合う度胸がない」
くだらないと、笑うでしょうね。秋葉は失望したように付け足した。
「君は、俺が思っていたような人間ではないようだ」
「やっとご理解いただけましたか」
皮肉な言い方だった。
赤井はとんだ思い違いをしていた。目の前にいる女は、降谷零ともスコッチとも似てなどいない。彼らは常に、まるで恐れを知らぬかように振る舞った。
しかし、相違は咎めるべきことなのか、逃げることは悪であり弱さなのか。あるいは、立ち向かうことだけが正義であり強さなのか。
彼は判断を下すことはなかった。ましてや、自分のことでもないのに。
「最後は、君が自分自身で決めろ。……俺ではなく」
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作者の勝手な裏設定
降谷さんはクールで言葉足らず気味。
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長谷夏子(プロフ) - 笑福さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。結末に向けてラストスパートをかけていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 16時) (
レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
笑福(プロフ) - 再びコメント失礼致します。やはり長谷さんの書く小説は引き込まれる内容でとても面白いです!続き頑張ってください。最後までお付き合いします\( *´ω`* )/ (2018年11月10日 14時) (レス) id: ada93b3781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長谷夏子 | 作成日時：2018年10月18日 19時
