裏と表は秘密のまま ページ5
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「そうかしら」
「ええ」
秋葉は頷くと、躊躇いがちにベルモットの目を見た。
「あなたの手助けには感謝しています」
二人はしばらくの間、真面目な顔で見つめ合った。窓から差す太陽の光が、ベルモットの銀髪を艶やかに照らしている。
消毒液の染み付いた、薬臭いこの部屋が、まるで閉じられた箱のように感じた。息が詰まる。だが、自分のした違法作業は、自ら片をつけねばならない。
そう、ミス・ヴィンヤードとの決別だ。
どくどくと鈍くも激しい鼓動に知らないふりをしながら、ゆっくりと口を開いた。
「あなたは悪党ですが、悪い人ではありません。しかし……いい人でもない。あなたとはここでお別れですね」
突然話題を変えた秋葉に、ベルモットは整った眉をひくりと動かした。
「そうね」
「眉一つ動かすことなく殺生をはたらく人を、いい人とは呼びませんので」
それを聞くと、ベルモットは声をあげてせせら笑った。底冷えするような、残酷で皮肉な笑いだった。
「それはあなたも同じじゃないの」
それでも秋葉は態度を崩さず、落ち着き払って答えた。
「否定はしません」
ふ、とベルモットがため息混じりに笑みを浮かべる。
「やはり、私は間違ってなどいないわ」
怪訝そうな顔をした秋葉に、ベルモットは豊かな声で言った。
「清廉でなくとも、やはりあなたは正直者のようだから」
彼女は腰かけていた椅子から立ち上がった。
「そろそろ時間ね。気が向いたら、手紙でも書くわ」
「どちらへ？」
よりいっそう妖艶に笑みを深め、豊かな声で囁く。
「
手をひらひらと振って、ミス・ヴィンヤードは颯爽と病室から出ていった。変装を直していなかったが、彼女なら厳しい空港警備の目をもかいくぐってしまうのだろう。
「秘密、ね」
最後まで分からない人だった。もう今生で会うことはないだろう。次に顔を合わせるとしたら、あの世かはたまた地獄か。くつりと喉の奥で笑った。
静かになった病室で、ふと自分の腕を見た。少し細くなった気もする。筋肉が落ちたのだろう。きっと、体力も同様のはずだ。早く怪我を直して持ち直さねばならない。次は、間に合うように。
自分でもどうかしていると思うほど、頭の中は降谷零のことでいっぱいだった。でも、そのことは彼に秘密だ。
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作者の勝手な裏設定
降谷さんはクールで言葉足らず気味。
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長谷夏子(プロフ) - 笑福さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。結末に向けてラストスパートをかけていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 16時) (
レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
笑福(プロフ) - 再びコメント失礼致します。やはり長谷さんの書く小説は引き込まれる内容でとても面白いです!続き頑張ってください。最後までお付き合いします\( *´ω`* )/ (2018年11月10日 14時) (レス) id: ada93b3781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長谷夏子 | 作成日時：2018年10月18日 19時
