特別な夜※ ページ11
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Aはリビングルームの隅にひっそりと設置してある小振りなクリスマスツリーを指差した。重たげなオーナメントが飾られ、きらきらと照明を反射している。
「ツリーもあるし。今夜はご馳走だよ、せっかくのクリスマス・イブなんだから」
憮然とした表情のままAが続ける。
「サンタクロースの衣装もあるけど、着る？」
その言葉には、白いセーターを身に付けている零がちょっと顔をしかめて首を横に振った。
「赤はあんまり好かないんだ」
「あなた、まだそんなことを言ってるの」
「悔しいんだよ、赤を着るのは」
大きなため息をついたAは呆れたように笑って、夕食の支度をするためにキッチンへ姿を消した。零もそれを追いかけて彼女に声を掛ける。
「手伝うよ」
「ああ、ありがとう」
二人で談笑しながら料理を作り上げ、二時間もしないうちに数品が食卓に並んだ。
部屋の電灯を落として代わりに数本の蝋燭に火をつければ、オレンジ色の柔らかい光が二人を包んだ。シャンパンの栓を開け、グラスに八分目まで注ぐ。
「じゃあ、乾杯」
グラスを軽く持ち上げ、静かに口をつけたのを皮切りに食事を始める。
「どう？」
「うん、うまいよ。ありがとう」
「あなたには負けるけどね」
黒ずくめの組織が壊滅したとはいえ職務に追われて多忙な二人にとって、久々のゆったりとした時間だった。
食事が終わってシャンパンの瓶を空にすると、今度は零がワインを取り出す。
「まだ飲めるだろ？」
「ええ」
ソファに腰掛け、映画のDVDを再生する。Aの趣味にしては珍しく、ラブロマンスものの洋画だった。
ストーリーの展開も盛り上がりを見せるころ、そろそろ彼女は酔いが回り始めてきた。零も同様のようで、触れている肩がいつもよりも熱い。
「A」
映画はちょうど、男女がロマンチックな口付けを交わしているところだった。名を呼ばれたAは鬱陶しがる素振りもなく、素直に零の方を向く。
「キスしたい」
零は彼女の腰を抱き寄せて耳元でそう囁く。
Aは返事の代わりに零の首に腕を回し、熱烈なキスを仕掛けた。
彼もそれに応えるように口付けを深くしていき、うっとりと視線を絡ませる。
「君、わざとこの映画を選んだろ」
濡れた唇同士が再びくっつきそうな距離で零が言う。
彼女は何も答えず意味ありげな笑みを浮かべて、無言で続きをせがんだ。
作者の勝手な裏設定
降谷さんはクールで言葉足らず気味。
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長谷夏子(プロフ) - 笑福さん» コメントありがとうございます。とても励みになります。結末に向けてラストスパートをかけていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 (2018年11月10日 16時) (
レス) id: 19bd7edd69 (このIDを非表示/違反報告)
笑福(プロフ) - 再びコメント失礼致します。やはり長谷さんの書く小説は引き込まれる内容でとても面白いです!続き頑張ってください。最後までお付き合いします\( *´ω`* )/ (2018年11月10日 14時) (レス) id: ada93b3781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長谷夏子 | 作成日時：2018年10月18日 19時
