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「いいか。今日からここで王室の護衛をするんだぞ。オリオン、期待している」

「はい」

期待なんてするなよな。でも、俺は絶対に死なない。

いいぜ、やってやる。アンタらが舌を巻くぐらい、俺が一人で全部やってやる。

そう決意した。こいつらと一緒にされるのはもっとムカつくんだ。

だから見てろよ。俺は生きて日本に帰るんだから。



「いいか。アンタらはここ守ってろよ。余計なこと
はするんじゃねえ」

騎士のやつらは不服そうな顔をしたが、Yes.と言った。

それから一時間もしないうちに反国王派の若者たちがすごい勢いで走ってきた。

早口で聞き取りにくいが英語で“国王、落ちろ!”と言っているようだ。

幹部のオッサンの声が耳元で響く。



「はい」

行け、と言われた。

俺は腰の剣を引き抜き剣の背を下に持った。

目の前にいるやつから剣を振り落とす。

「ぐっ…!」という声と同時に気絶していった。

俺は剣を振り回す手を止めずに走った。
惨い音と声、倒れる音が絶え間なく鳴り続く。

しかし、反国王派のやつらは俺に勝つのは無理だと思ったのだろうか。

俺の後ろにいる役立たずどもに向かっていった。
そいつらはというと、怯えて立ち向かうこともしない。

「クソッ!バカが!」

俺はターンし、そちらへ向かった。
男も女も断末魔のような悲鳴をあげる。

自分の身ぐらい自分で守れよ…!
それぐらいのことはしろよ…!

俺はそばにいたアフリカ系の男から剣を奪い取った。

そして、首めがけてさっきの倍のスピードで剣を動かした。
あと少し、そう思って気を緩めたとき、手元が狂った。

「あっ…!」

剣の刃の部分が少し触れてしまった。

人の肌が切れる音がする。

赤い液体が目の前に浮いている。

そして俺の頬に触れた。冷たい。

幸い、切れたのは少しだけで命に別状はないようだが、初めて人を傷つけた。

この手で切ってしまった。血を見た。

「クソ…クソッ!!」




任務には成功したし、オッサンからも、国王からも直に褒められたがそんなことはどうでもよかった。

今日見た血の色だけを鮮明に覚えている。

怖い。震えが止まらない。

人生最大の苛立ちを覚えた。
自分に対しての、境遇に対しての苛立ち。
気を緩めたから、いや、それ以前に俺は、こんなに弱い奴だったのか。

人を切っただけで震えるような心の小さい奴だったのか。


もはや、何に対して怒りを向けるべきなのか、俺にはわからなかった。

第三章 「真実と愛」→←.



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作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:JACK | 作者ホームページ:ないでござる  
作成日時:2017年7月16日 21時

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