何気ない朝もずっと（石川透） (ページ2)

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再会ページ2

「いらっしゃいませ。こちらのお席にどうぞ。」

昼の職場のカフェで、今日も気合を入れて仕事をする。

「Aランチ2つ、コーヒーと紅茶です。」

「了解。」

店長のシゲさんは、客商売をしているくせに人見知りだ。

だから、この店の従業員は私1人で、接客はほぼ私の役割になっている。

「いらっしゃいませ。…あ。」

つい声を上げた私の視線の先には、昨日からずっと私の頭の中を陣取っていた、石川さんの姿があった。

「昨日はどうも。手越さん、ここで働いていたんですね。」

すごい偶然に、胸がうるさく鳴る。

「はい。カウンターでよろしいですか？」

ドキドキしているのを悟られないように気をつけたら、つい他人行儀になってしまう。

「はい。」

「こちら、本日のランチメニューです。」

メニューを渡すと、石川さんは真剣な顔でそれを眺めた。

何を食べるのか、そんなに真剣に考えているのかと思うと、可愛く思えて仕方ない。

「すみません、こういうメニューにあんまり慣れてなくて。
この中で、ガッツリ系の物ってなんですか？」

ガッツリ系の物って…

笑っちゃいけないと思いつつも、思わず頬が緩んでしまった。

「刑事は体が資本だっていつも言われてるんすよ！」

口を尖らせている姿は、幼目な顔と相まって、少年のように見える。

「なら、タコライスがおすすめですよ？」

「たこ飯ですか？」

「日本語訳しないでください。
ご飯の上に、ひき肉とかトマトとかチーズとかが乗ってる料理です。
樋口さんが、時々差し入れにするからってテイクアウトしてくれてる。」

樋口さんの差し入れでピンときたらしい石川さんは、それで！と元気よく答えた。

「そういえば、樋口さんはご一緒じゃないんですか？」

カウンターでお皿を拭きながら石川さんに聞く。

こうして自然な流れでおしゃべりできるから、テーブル席が埋まっていて良かったなと思う。

「兄貴、今日は大樹と約束してるらしいです。
前に兄貴から貰った差し入れが美味かったから、今日の昼はここに来てみようかなーって。」

「ありがとうございます。」

「Aさん、ちょっといい？」

シゲさんに呼ばれた私は、一度厨房に引っ込んだ。

「あのお客さん、大盛りにするか聞いてきて。」

「はーい。」

こんな伝書鳩の仕事も、私の役目だ。

自分で聞けばいいのに、と思うけど、シゲさんにとってそれはハードルが高いらしい。

「石川さん、大盛りにしますか？」

パッと反応してお礼をいう石川さんは、とても可愛かった。