紅葉 ページ8
(すごい！)
(きれいだね、紅葉って)
ニコニコ笑いかけてくる彼女。
表情だけで全てが伝わってくる。
「そうでしょう、ここが僕の全てなんです。」
僕は、そっと彼女を抱き上げた。
「ここは…ずいぶん田舎ですが、どこよりもきれいな紅葉が見られるのですよ」
彼女は、美しさに浸っているのか、笑顔のまま黙っている。
「ずっと前からあなたをここに連れてきたかったのです。あなたは昔から変わらない。きれいな瞳で笑うのですね」
彼女の横顔はいつまでも見られる。
なんて美しいのだろうか。
「そろそろ冷えますから、中に入りましょうか。」
僕と彼女は家へと帰る。
部屋に入った直後、家の戸が開く。
「ただいま……おい、親が帰ってきたのに迎えもせんとは…感心しない。出てこい！」
お父さんの怒る声が聞こえる。
「待っててください。すぐそっちに行きますから。」
彼女を置いて部屋から出た。
「お父さん、お帰りなさい。」
「遅いな。今日は玄関で寝ろ！今回の件は許せんからな」
お父さんが、すれ違いざまそう言う。
「お願いします！どうかそれだけは！風邪をひきます」
追いかけて訴えるが、聞いてくれるわけもなかった。
「親の話が聞けんのか？」
「今日ばかりは無理です！」
僕がそう言うと、お父さんは黙った。
部屋に戻ると、ニコニコしている彼女が待っていた。
「もう少し、やり残したことが終わればそこまでいけるから、待っててください。」
僕は、会社に向かった。
「おい、テメェは今日くる日じゃねぇだろうが！」
案の定上司が怒鳴りつけてくる。
「今日は、辞表を出しに来た次第です。」
僕は、辞表を差し出す。
今の僕になら、なんでもできる気がしたんだ。
「テメェはダメだ、ダメ人間がここをやめて次に行けるわけが」
上司は、話の途中で黙ってしまった。
「ッ！？」
社員達が僕のことを驚きの眼差しで見ている。
そりゃそうだろう。
上司に初めて辞表を出し、初めて黙らせたのだ。
「もしもしっ」
誰かが誰かに電話をかけている。
「助けてっ！」
逃げたいだろうな、上司から。
僕は快楽で満ちている。
フラフラと家へ帰ると、お母さんの悲鳴が聞こえた。
「だれかーっ！誰かいないのっ！」
僕がそのまま歩いていくと、
「きゃーっ！」
母親は叫んだ。
「人殺.し！！」
僕は母親を黙らせる。
「今からそこへ行きますよ、いとしいあなた。」
僕は包丁を胸に突き刺した。
薄れゆく意識の中、サイレンが遠ざかる。
「会社へ向かってるのか……」
僕は意識を手放した。
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就村 隆成(プロフ) - みるくプリンさん» ありがとうございます！ (2020年7月28日 15時) (
レス) id: 0cbd0748ba (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - お待たせしてしまい申し訳ありません！【続編】イベント参加者様の作品をアドバイスさせて下さい！と言う作品に書かせて頂きました。見て頂けたら嬉しいです。それと右の☆をポチらせて頂きました。 (2020年7月28日 12時) (レス) id: 7db76bcf0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：就村 隆成 | 作成日時：2020年1月7日 23時
