7話 ページ7
それはいきなりだった
《登坂広臣 美人雑誌モデルと 熱愛!!》
電車の吊り広告だった
落ち着いていたはずの心が
またギュンと音をたてて
崩れていくような気持ちになった
この張本人から
さっきまで話を聞いていたと言うのに・・・
いざ公共の場所で、こうしてデカデカと
文字になっているのを目の当たりにし
激しく動揺してしまった。
こんなに大きく書かれるほど
彼は有名人なんだと 改めて実感した
学友の剛ちゃんがきっかけで
知り合ったせいか
これまでTVの向こう側で歌い踊る姿を
見ても、特に遠い存在に思う事はなかった
でも今、彼と私のいる世界の違いを
見せつけられているような気がして
胸が苦しくなっている
お相手の方の肩書きも
この広告で初めて 知る事になった
10分ちょっとの通勤電車
私はただ、広告をずっと見つめていた
渦巻く自分の感情を
ひとつ、ひとつ、整理するように
気持ちを落ち着かせ
それでも鼻の奥がツーンとする痛みには
ただ、耐えるしかなかった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
女と言うのは、こんな時
とことん自虐的になる生き物なのか・・・
いや、しっかり現実を見据えたいと
言う思いからなのだろうか・・・・
よせば良いのに、電車を下りるなり
私は週刊誌を買った
早めの出勤で フロアにはまだ誰もいない
いつもなら、通勤でかいた汗がひくのを
待ってメイクを直したり
持参した朝刊をゆっくり読んだりするけど
今朝は余裕のカケラもなく、カバンを置き
週刊誌を開いた・・・・。
そこには、私の見たことのない彼がいた
陽気に happybirthdayのハットを被り
彼女と寄り添い、写真におさまる彼
恋人同士であったその様子は
いざ写真で見せられると、それはとても
直視が出来ないほど、生々しいものだった
記事には、二人の仲は
以前からファンの間では噂になっていたと
書いてあった。
そうなんだ・・・。何にも知らなかった
私はここで初めて彼の名前を検索してみた
・・・・本当だ。
関係性を裏付けるブログ写真や
インスタの写真が、あふれていた。
目に飛び込んでくるもの1つ1つで
私がこんなに動揺してしまうと
彼はわかっていたからこそ
あんな風に連絡をくれたのだろうか・・・
早く、日本を発ってしまいたい
ひとりぼっちのオフィスで
そう呟かずにはいられなかった。
255人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:茶々 | 作成日時:2016年1月10日 13時