winter rose (ページ8)

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YT 2 ページ8

『やーだ』

「おい」

『だってやだもん』

「俺はAのことが好きだよ。逆もまた然りなのも理解してる」

『聞きません。うるさいです』

「Aの夢は理解してるし応援してる」

『無視よくないよ〜』

「だから、日本に留学するっての反対しなかった」

『ありがとうって何回も言ったじゃん』

「今更それに何か言うつもりもない」

「Aと離れることが不安ってわけでもない。離れてても好きでい続ける自信はあるから」

『私もだよ』

「だけどさ…1回くらい本心聞いてよ」

『やだ』

そう言って俺から離れて俺と反対の方向を向く彼女。

「Aー…」

『言いたい言葉、わかってるよ。それを言われてモヤモヤしたまま日本に行くなんてやだ。だったら聞きたくない』

そんなこと言われたら、やはり言えなくなってしまう。

違う、言う勇気が俺にはないんだ。

「……モヤモヤ？」

『モヤモヤするよ』

「え、まじか」

『逆にモヤモヤしないとでも思ったの？私、血通ってる人間だからね？』

「確かにすぐに返答がほしいわけでもないけどさ…」

『返答？』

「ん？俺ら話噛み合ってなくない？」

『え？』

「とりあえず聞いてよ」

『や、やだよ』

「聞いて」

『やだってば』

「じゃあ見て」

『見る？？』

「はい」

『ん？え…？ど、ゆこと？え？これって…』

「見ての通り」

『指輪…ですねこれは…』

「俺らまだ若いし、俺もお前もこれからがスタートな訳じゃん」

『うん』

「だけど、何年経っても何十年経っても、Aがいない人生なんて想像できないんだよな」

『わ、私もだよ』

「今プロポーズってのはちょっと無理あるからさ。何年後かの予約指輪的な感じで」

『なにそれ〜』

「ま、お前はずーっとこの指輪付けて、俺に縛られてろってこと。」

『呪縛だな…』

「あ、そゆこと言うんだ〜」

『嘘！うそうそ！めっちゃ嬉しい』

「ん。」

『ありがとう』

「で、Aが想像してた言葉何？」

『内緒』

「なんだそれ！」

『もうちょっとこの指輪に浸らせて〜』

「そんなんいつでもできるだろ〜」

『そうだけど…嬉しいんだもん』

「今日はなんだか素直だな」

『いつもが卑屈みたいな言い方』

「嘘ではないだろ？」

『あ、そゆこと言うんだ？』

「なんかさっきもこの会話したな」

『逆バージョンだったね』

「ほら、とりあえず。手出して」

『ん』

「いつになるかわからないけど、それでも待っててくれますか？」

彼女はそっと、頷いた。